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ちょっと美希っ!でこちゃんとかいってんじゃないわよっ!まったく。
はい、アタシが誰か言わなくても分かるわよね?そう、みんなのスーパーアイドル水瀬伊織ちゃんよ。にひひっ。
やよいのお姉ちゃんの役の『密柑屋伊織』は言われたから仕方なくやってるワ。べ、別に喜んでなんてないわよっ!
で、アタシが紹介するのは、これもハラたったんだけど、伝説のもやしを取ってきたシーンよ。本放送では病院のシーン間挟んで『取って来ました、終わり。』だったけど、ホントに長野の山奥までいって、しかも、あの台門役の有名俳優まで協力してくれたのにカットとかありえないワ!
いい、ホントに行って来たんだから、しっかり見るのよっ!


長野県山奥
「本当に、しっかり雪が残ってるわね。しっかし、雪の下にあるって言うけど、こんなに雪があるんじゃ、どこにあるのかサッパリ分からないわね。」
残雪の中を歩きながら、伊織は苦笑いしながら言っていた。
「確かにお姉ちゃんの言う通りかも。伝説のもやしはどこにあるんだろ・・・。」
「試しに掘ってみましょうかぁ?」
「掘るったって、闇雲にやってたら日が暮れるどころか何日掛かるかわかんないわよ。」
「うふふ、私に任せて下さい。」
そう言うと、雪歩は小さなスコップを取り出す。
「まあ、期待はしないけど、アンタに任せるわ・・・。」
「雪歩さん、そんな小さなスコップでどうするんですか???」
伊織は呆れた感じで言っていて、やよいは不思議そうに聞いていた。
「真ちゃん、待っててね・・・。はあぁあっ!今こそ奥野スコップを〜!」

雪歩は静かに言った後、気合を入れてスコップを高く掲げて一気に振り下ろす。雪面に触れる頃には高速回転するドリルのようになって、一気に雪を掘り進んで行った。
伊織とやよいは突然の出来事に驚いて目をぱちくりしていた。無言でお互いに見合った後、ほっぺたを軽くつねりあっていた。
「ゆめひゃないれ、おねえひゃん。」
「そうれ、やほひ。」
それぞれ言い合った後、掘られた穴を2人で覗き込んでいた。
「はれ?」
穴を覗き込んでいたやよいは視界の端に何かが映ったので不思議に思って顔を上げた。
「どうしたのやよい?」
やよいの言動を不思議に思った伊織も顔を上げた。
「お姉ちゃん!小さいクマさんですよ〜。かわいい〜♪ぬいぐるみみたい〜。」
やよいはちょこんといるクマの子供を抱えてほお擦りしながら言っていた。
「ちょっと待ちなさいよ、やよい・・・。子供がいるって事は・・・。」
「グルルルル・・・。」
伊織が言い切る前に、低いうなり声が2人の後ろから聞こえた。
「キャーー!出たーーー!」
「え?出たって?へぶっ!?」悲鳴を上げた庵の前には2メートルをゆうに越える親グマがいて、不思議がっていたやよいを右手で吹き飛ばした。
「やよいっ!?こんのぉおおっ!オデコサンシャインッ!!!」
伊織は怒って、雪面の反射を集めて一気に親グマに照射した。
「グガァアッ!?グアッ、ガアッ!?」
親グマはあまりの眩しさに思いっきり目を押さえて、ゴロゴロ転がり回って苦しんでいた。
「キュー・・・。」
倒れているやよいと、苦しんでいる親グマを見て、子グマは伊織を見上げた。
「なっ、何よ・・・。そんな、何とかしてくれみたいな切ない目で見られてもアタシが困るんだから・・・。」
伊織は子グマの方に困ったように答えていた。
「伊織ちゃん、やよいちゃん、ちょぴっとだけ見つけましたよぉ。って、あれぇ?」
ひょっこり穴からヘルメット姿で顔を出した雪歩だったが、状況が分からずに首をかしげた
「ちょっと雪歩。それよこしなさい。本物か確かめるわ。」
「は、はい?どうぞぉ。」
伊織から言われて、不思議そうな顔をしながら雪歩は一本だけあるもやしを渡した。
(やよいにいち早く上げたいケド、効果を確かめてからの方がいいカシラね・・・。)
伊織は半分にしてから苦しんでいる親グマ方へ寄って行った。
「あのぉ、伊織ちゃん、危ないよぉ。」
を震えながら雪歩は呼び止めていたが、伊織は平然と親グマの前まで来た。
「べ、別にアンタのためじゃないわよ。やよいの毒見よ。」
嬉しそうに擦り寄って見上げている子グマに言いながら、伊織はもやしを親グマの口にタイミング良く入れた。
「ガッ!?グギャオォォオーーーー!!!」
親グマきなり起き上がったかと思うと、傍にあった木に向かって狂ったように叫び声を上げながらガンガン頭を何度もぶつけている。
「ちょっ、ちょっと!?雪歩、本当にコレなワケっ!?」
「えっ、えっとぉ・・・。そ、そのハズなんだけどぉ・・・。」
伊織が焦って聞くのに、雪歩は親グマの状況を見て自信無さそうに答えていた。
「ガゥ?」
少しするとハッと我に返った様に親グマが目をぱちくりしながら大人しくなった。
「一応・・・目は治ってるみたい・・・ね。」
(コレ、やよいに食べさせて大丈夫カシラ・・・。)
ちょっと悩んだ伊織だったが、傷だらけで倒れて動かないやよいに食べさせた。
「もぐ・・・。」
食べているのを伊織も雪歩も真剣な表情で見ていた。
「うっう〜!あはははっ!お姉ひゃん?ちひゃ〜さん、まこ〜ろひゃんも〜。ころりひゃんもいるれすねぇ〜。」
やよいは飛び起きてとろ〜んとした目つきの上に壊れた笑いを浮かべた後、呂律の回らない口調で言っていた。
「や、やよい?」
伊織は訝しげにやよいを見ながら呼び掛けた。
「伊織ちゃん、避難してぇ!こっちぃ〜!」
やよいの異変にいち早く気が付いた雪歩は木の陰からクマ親子と一緒に手招きしていた。
「ひゃいらーっひ。あはははは〜。」
「どうなってんのよ、雪歩?」
「えへへ、私にも分からないよぉ。」
除雪車のように雪をあちこちにばらまいて暴れまわっているやよいを木の陰から見ていた伊織は雪歩に聞いたが、雪歩は困ったように笑いながら答えていた。
「はれ?お姉ちゃん?雪歩さん?クマさん?」
やよいはふと我に返って不思議そうに周りをキョロキョロ見渡した。
「はぁ、強い薬には副作用があるワケね・・・。やよい、こっちよ。」
ちょっと溜め息交じりで言った後、伊織はやよいを呼んだ。
「ひゃ〜、おっきなクマさんだね〜。」
やよいは木の方に寄って来て、親グマを見上げながら感心していた。
「クマッ!?大きなクマですぅ〜。」
雪歩はそういうと急に親グマから隠れるように木の後ろに隠れてガタガタ震えていた。
「雪歩・・・アンタねえ。さっき、一緒に抱き合ってたでしょ。」
伊織は雪歩の様子を見て呆れながら言っていた。
「ガァッ・・・グァ。」
「???」
「このクマ何か言おうとしてるみたいだけど・・・。流石にクマの言葉なんてアタシたちに分かるわけな・・・。」
「どうやら、このクマさんは閉じ込められちゃってるみたいですねぇ。」
「って、ちょっと、雪歩!アンタわかるワケ!?」
「は、はいぃ、このヘルメットのおかげみたいですぅ。」
驚く伊織に雪歩はビビリながら答える。
「雪歩さん、クマさんは他になんて言ってますか?」
「え、えっとぉ・・・。冬眠から覚めて、えさを取りたくて外に出たかったけれど、雪の壁に阻まれて出れなくてお腹が空いてどうしようもなかった。ですかぁ。えっ!?雪の下に一杯もやしある場所を知ってるんですかぁ!?」
途中からは怖いのも忘れて、雪歩は身を乗り出していた。
「ちょ、ちょっとホント、それっ!?こっから助けてやるから案内しなさいよっ!」
伊織は驚いてから、クマの方に言うと、頷いてから歩き始めた。
「伊織ちゃん、助けるってどうするんですかぁ?」
「お姉ちゃん?」
「良いから、行くわよ。」
クマに続いて歩き出す伊織に、やよいと雪歩は首を傾げあいながら着いて行った。

「ここですねぇ?行ってきま・・・。」
「ちょっと待った。雪歩、昨日の台門とかいうやつにココへ迎えに来るように頼める?」
今にも行こうとした雪歩を止めて、伊織が聞いた。
「ええ、ヘリコプターをお持ちですから大丈夫だと思いますよぉ?」
「それじゃあ、このクマとかが食べれるものを持ってくるのと一緒に、搬送用の装備もつけて来るように頼んでくれる?」
「はい?分かりましたぁ。台門さん、聞こえてますかぁ?」
『はい、こちら台門。聞いていました。これから装備を整えてすぐにお嬢達のいる場所へヘリで向かいます。』
「お願いしますね〜。」
雪歩はニコニコしながら慣れた感じでやり取りしていた。
「お姉ちゃん、今ヘルメットからインカムがいきなりパッて・・・。」
「しっ、やよい、良いから黙ってなさい。」
やよいが、言おうとすると伊織は静かにたしなめる。
「それじゃあ、改めて行ってきますねぇ。」
「お願いしますっ!」
「ヨロシクね。」
雪歩は2人に言われると一気にまた雪の中へと消えて行った。
「さっきは悪かったわね。もう少ししたら食べ物来るから。それと、ちゃんと約束通り助けてあげるから・・・。」
伊織は親グマの方に、申し訳無さそうに小さな声で言っていた。親グマの方は分かっているのか、大人しくしていた。
「あははっ、くすぐったいよ〜。」
一方のやよいの方は子グマにじゃれ付かれていた。

「ありましたよぉ。沢山ありましたけどぉ、一部だけ取ってきましたぁ。」
雪面にぽこっと出て来た雪歩はそう言うとビニールに入った伝説のもやしを2人に見せる。
バラバラバラ・・・
それと同時にヘリコプターの音がし始める。
ある程度のところでホバリングして、台門が降りてきた。
「お嬢、お待たせしました。自分はどうすればいいですか?」
「伊織ちゃん?」
「じゃあ、まずは食べ物を降ろして頂戴。ある程度食べてから搬送用の装備で、そこのクマを吊るしてくれる。途中でクマを降ろしてくれればいいワ。後は任せる。」
「わかりました。」
伊織のテキパキという言葉に台門は納得して支持を出す。
食料が降ろされて、親グマも子グマも一心不乱に食べ始める。
「よっぽどお腹減ってたんだねえ。」
物凄い食欲に、やよいは驚きながら見ていた。
「冬眠から覚めてずっとさまよってたんなら、かなり時間経ってるだろうし。これで、落ち着けば、人を襲うことも無いでショ。」
「そうですねぇ。これで、後は戻ってこれを真ちゃんにあげればぁ・・・。」
「万事解決よ。にひひっ♪」
少ししてから、クマを吊り下げてヘリコプターは飛び立った。
途中でクマの親子を降ろしてから、見覚えのある広い駐車場へと降りて行った。


どうだった?これだけのシーンをカットするとかホントありえないワ。出てきた親グマは着ぐるみのスタッフがやってたけど、子グマは本物で可愛かったのよね〜。ま、まあ、それなりね、それなり。うさちゃんには敵わないケド。じゃ、次は小鳥頼んだわよ。


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