『俎板戦隊フラットV』12話「新必殺技完成!」未公開シーン(後編)

はいさいっ!
自分、我那覇響。待たせたなっ!これから未公開シーンの後半をお送りするぞっ!
おい、千早?出番だぞ?って、げげっ!
我那覇さん、このメイド服を着て「私」で自己紹介してみて、ね?ねっ?
なっ、何言ってるんだ、千早!もう番組始まってるぞっ!じゃ、じゃあ、自分はもうこれで行くからなっ!
待って我那覇さん!せめてメイド服だけでも・・・。ああ、行ってしまったわ・・・。
はっ!?しっ、失礼しました。え、ええと、その、あの、んっんぅ。
コホン、改めまして、今回は私が演じている俎板戦隊フラットVのリーダー『まな板ブルー』こと『蒼井千早』が必殺技「蒼い鳥」をどうやってパワーアップするか悩むところからスタートです。
それではどうぞっ!
くっ・・・。自分でまな板を連呼しようとは・・・。えっ!?まだマイク入っていたんですかっ!?あのちょ・・・プツッ

喫茶『ことり』
(やよいは頑張って結果を出しているのに、私は一行に全く前へ進まない・・・。)
「くっ・・・。」
千早は学校帰りに喫茶ことりへ来ていたが、自分の不甲斐なさを感じつつ焦りもあって俯いていた。
「ねえ、真美〜。千早お姉ちゃん元気ないね・・・。」
「うん。そうだね、亜美。少し前まではすっごく頑張ってたのにね・・・。」
その様子を、亜美と真美は少し離れた所から心配そうに見ていた。
「春香ちゃん、春香ちゃん。」
「あっ、はい?何ですか、小鳥さん?注文ですか?」
ウエイトレスをしていて呼ばれた春香は不思議そうに小鳥に聞いた。
「今日はお客さんいないから、ウエイトレスはいいわ。その代わり、千早ちゃんと亜美ちゃん真美ちゃんを元気付けて欲しいの。」
「はい。分かりました。」
春香は沈んでいる千早と心配そうにしている亜美真美の方を見てから、小鳥の方へしっかり頷いて返事をした。
「ねえ、千早ちゃん、亜美真美。カラオケ行かない?」
「ぇ?・・・私は・・・。」
春香に聞かれて、千早は俯いたまま言いよどんでいた。
『行く行く〜、行っちゃうよ〜。ねえ、千早お姉ちゃんも〜!ほ〜ら〜!』
「え、えぇ・・・。」
亜美と真美の2人は千早のそれぞれ片手ずつを取って喫茶店のドアの方へ引っ張っていく。
「それじゃあ、小鳥さん。いってきま〜っす!」
入口のドアを開けて先に千早と亜美真美を表に出して、春香は小鳥にウインクしながら言った。
「はい、気を付けて下さいね♪」
小鳥の方も春香に微笑みながら声を掛けて、カウンターから見送っていた。

カラオケボックス『テツカラ館』
『とっても とっても とっても とっても とっても とっても 大スキよ♪』
「やんややんや〜!ねえ、千早お姉ちゃん。来たのは良いけど、歌わないの?」
「良いぞ〜、はるる〜ん!そうだよ〜。いつも、マイク離さないくらい熱唱するのに、さっきからむずかし〜顔して歌わないなんてヘンだよ?」
ノリノリで歌っている春香に声援を送りつつ亜美と真美は次の曲を入れずに、黙ったままの千早へ心配そうに話しかけた。
「えっ!?あっ、そ、そうね・・・。」
答えたものの、千早は亜美と真美から顔を逸らしていた。
『じゃあ、私からリクエストしちゃう〜っ!』
そう春香が言うと本を見ずに、慣れた手つきで番号を入れる。
「でも、私・・・。」
「良いから良いから〜!はい、マイクだよっ!」
千早はマイクを渡されて、流れてくる曲を歌い始めたが、覇気も元気も無く、ノリノリだった春香も亜美真美も途中でテンションダウンして大人しくしていた。
「どうしたの、千早ちゃん?いつもと全然違うよ?楽しくない?」
「千早お姉ちゃん、楽しく歌わないと駄目だよ〜。」
「そうそう、そういうものが伝わっちゃうのが千早お姉ちゃんだからね〜。」
「楽しく・・・。」
春香、亜美、真美の3人に言われて、千早は複雑な表情になっていた。
「あっ、私ドリンクバー取って来るよ。何飲む?」
「亜美、カルピス!」
「真美はコーラっ!」
「私は、お茶系で・・・。」
「かしこまりました〜!いってくるね〜!」
3人の注文を聞いた春香は、喫茶「ことり」での注文宜しく返事をすると、部屋を出ていった。
『千早お姉ちゃ〜ん。』
亜美と真美は名前を言いながら千早をジト目で見ていた。
「なっ、何?」
「はるるん、一生懸命やってるのに〜。」
「さっきのは素っ気無さ過ぎだよ〜。」
「ごめんなさい・・・。色々気になってて・・・。」
突っ込まれた千早は、頭を下げながら亜美と真美に謝っていた。
「そんなんじゃ駄目だゾ!まあ、はるるんの件はいいとくとして、本題は歌だよ、歌!歌は届けるってカンジだよね、亜美?」
「そうそう、聞いてくれる人に想いを届けるんだよね?声を聞かせるんじゃなくて、歌詞の意味とか、感情を相手に伝えるんだって、千早お姉ちゃんが亜美たちに教えてくれたよね?」
「はっ!?」
千早は亜美と真美の言葉に俯いていた顔を上げる。
「それから、学校の音楽でも、歌が上手になったねって真美たち褒められっ放しだよ。」
「うんうん、千早お姉ちゃんのお陰だよ。イヤイヤ歌っていた時もあったけど、今は歌うことがとっても楽しいし、好きだよ〜。」
「そうね、そうよね。亜美・真美、ありがとう・・・。」
ギュッ
「うにゃ!?」
「にゃにゃにゃっ!?」
急に千早に抱きしめられた亜美と真美は訳が分からずに首を傾げていた。
「お待たせ〜!って、あれれっ!?私、邪魔だったかな?」
「えっ?邪魔?春香、何かかんちが・・・。」
「んっふっふ〜。真美たちと千早お姉ちゃんのカンケイを見てしまったね〜、はるるん。」
「真美、なに言って・・・。」
「はるるん、モチロンどうなるか分かっているね〜?」
「あはははは、お、お邪魔しました〜っ!って、うわぁっ!?」
ばしゃっ!
春香が逃げようとした瞬間、持って来たグラスを千早と亜美真美3人の居るところへ全部ひっくり返してしまった。思わず3人はその場で目をぱちくりしていた。
「あああっ!?fご、ご、ごめんなさいっ!今拭くもの持って来るからっ!」
『ゆ〜る〜さ〜ん〜ぞ〜!』
ワタワタしている春香に、カルピスで白くなった亜美と、コーラで黒くなった真美が低い声で言いながらゾンビのように迫った。
「ひいいいぃっ!千早ちゃん、助けて〜!」
「自業自得でしょ、全く・・・。あっ!?」
(これって、もしかして・・・。)
春香から助けを求められて、溜め息混じりに言っていた千早だったが、ハッとなって番号を瞬間的に入れるとマイクを持って立ち上がった。
読み込んでいる間に、マイクの音量をゼロにして3人がもみ合いになっているのとは反対方向へと移動した。
『You are shock!』
ヒュゴォッ!
春香と亜美真美の方へ指を差しながら、千早が言うと衝撃波が巻き起こる。
『んぴっ!?』
衝撃波の通過と同時に変な声を上げた3人は、その場で硬直していた。
更に衝撃波が入口のドアや、窓を直撃する。
パリパリパリーンッ!ドゴォッ!!!
ガラスが割れると同時に、ドアだけでなく壁ごと廊下の反対側へ吹き飛んだ。
「愛で空が落ちてくるじゃなくて・・・声で壁が吹き飛んでる・・・。」
あまりの出来事に、春香は少し呆けながら言った。
「亜美たち無傷だよね?真美?」
「うん。何ともないね?」
亜美と真美は、混乱していて相手の体をぺたぺたしながら言い合っていた。
「これだわっ!」
千早はその場で目を見開きながら言った。

2時間後、片付け終わって、説教と領収書を貰った4人はテツカラ館を後にしていた。
「とほほ〜、律子さんにメガネのプレゼントを買おうと思って取っておいたバイト代がスッカラカンになっちゃった・・・。」
「亜美もヤキニクマンのゲーム買う筈だったのに・・・。」
「真美だって、ぷにキュアの変身セット買う予定だったもん・・・。」
春香、亜美、真美の3人はガッカリしてぼやきながらトボトボ歩いていた。
「ごめんなさい。ちゃんと返すから、ね?それで、別にお願いがあるのだけど・・・。」
「何?千早ちゃん?」
「お金以外だったら、考えてもいいケド?」
俯いていた春香と亜美は顔を上げて、千早の方を見ながら聞いた。
「真美、嫌な予感するからパス・・・。」
『えっ!?何それ?真美ずるいっ!?』
真美が何とも言えない顔で言うと、電光石火の速さで春香と亜美が突っ込んだ。
「じゃあ、春香と亜美。これから他のカラオケボックス行かない?というか行きましょう!」
『うぎゃ〜〜〜!』
「そんな事だと思ったんだよね〜。」
晴れやかな笑顔で言う千早に、春香と亜美が悲鳴を上げる中、ヤレヤレとジェスチャーしながら真美は溜め息混じりに言っていた。
「さあ、約束よ?大丈夫、歌いたいだけだから。ね?」
「本当?」
千早の言葉を聞いて、春香が訝しげに聞いた。
「本当よ、さっきみたいなヘマはしな・・・。いえ、歌うだけよ。」
「今、千早お姉ちゃん、スゴイことさらって言った!亜美、聞いたもん!」
「さあ、春香、亜美。行きましょう!料金はちゃんと私が持つから、さあさあ。」
千早はニコニコしながら、しっかりと春香と亜美の手首を持って歩き始める。
「こうなったら、ま、真美も一緒よね?ねっ?」
「亜美と行ってくれるよね?」
「ゴメン、はるるん、亜美。」
必死の形相で言う春香と亜美に、真美は手を合わせながら申し訳無さそうに言った。
『薄情もの〜〜〜!!!』
見送っている真美の視界から春香と亜美が消えていくと同時に虚しい叫びが夜空にこだましていた。

喫茶『ことり』
次の日、朝一番で真美が一人でやって来ていた。
「・・・というワケなのデスよ。」
「ありゃりゃ。それで亜美ちゃんは昨日帰って来なかったのよね?」
「うん、何となく予想はつくんだけど、心配だからここに来ればみんな来るかなと思って・・・。」
カランカラン
「いらっ・・・。」
真美の言葉の途中で、入口が開く音がしたので、小鳥が言おうとして、途中で言葉が止まっていた。
入口にはツヤツヤした千早と、その両隣に抱えられた目の下にくまを作った春香と亜美がいた。
「おはようございますっ!小鳥さんっ!真美っ!」
「お、おはよう・・・ございます・・・。」
「おはよう・・・千早お姉・・・ちゃん・・・。」
今まで見たこともない、元気でハキハキしながら笑顔全快で挨拶してくる千早に、小鳥と真美は目をぱちくりしながら答えていた。
「あははは、テツカラいえ〜・・・ぃ・・・。」
カクッ
「春香ちゃん!?」
「んひゃひゃひゃひゃ、どか〜ん、ぼか〜ん!みんな壊れる、ぜんぶ壊れちゃうよ〜・・・。」
カクッ
「亜美っ!?」
変なテンションで笑ってから気絶した春香の方には小鳥が、亜美の方には真美が慌てて駆け寄った。
「小鳥さん、真美。春香と亜美をお願いします。私は行くところがありますのでっ!」
『わ、分りました・・・。』
物凄い勢いで出て行く千早に言われて、小鳥と真美はぽかんと見送りながら答えていた。
そんな後ろでニュースが流れていた。
『昨夜から早朝にかけて、奈夢子市のカラオケボックス5店舗で連続崩壊事故がありました。幸いけが人などは出ていませんが、目撃者の証言では、突然壁が吹き飛んだり、天井が落ちてきたとのことです。警察では原因を・・・』


如何でしたか?ちょっと大袈裟でしたが、これをきっかけに、まな板ブルー必殺技の「蒼い鳥」の攻撃範囲を特定の場所から先に出すことが出来るようになりました。
それでは、私は我那覇さんを探しに・・・んっんぅ。
さて、次もフラットVのメンバーの一人にバトンタッチです。
我那覇さ〜ん!メイド服とエプロンもあるから編み物して〜!

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