退院

あれから一週間が経っていた。驚異的な回復力でセツナは今日退院しようとしていた。
病院の廊下を歩くセツナの隣には何故か真矢がいた。
「学校は良いの?」
セツナは心配になって聞いた。
「良いの、良いの。学校1日よりセツナの退院の方が大事だもん。」
真矢は笑顔ではっきりと言い切った。
「ごめんね。」
セツナは申し訳なさそうに言った。
「何で謝るの???私が自分で決めたんだから気にする事無いよ。とりあえず、家までは送ってくね。後はゆっくりしてね。」
不思議そうな顔をしてから答える。
セツナは黙って頷いた。
それから、真矢は学校での出来事を、セツナは病院の事を話ながらセツナの住むマンションへ向かった。

セツナのマンションの前につくと、入口に一人の男が立っていた。
{シルバーチェイサー・・・。}
セツナは一瞬厳しい顔つきになった。
そうとは気が付かずのん気に真矢はセツナの手を引いて、ファイの目の前を通過していった。
ファイは一瞬だけセツナを見たが、真矢が一緒に付いて行くのを見てその場から立ち去った。
「珍しいね、凄い美形の銀髪の外人さんだったね。」
「そうね。真矢はああいうカッコイイ人が好きなの?」
「ええっ!?」
普通に話しかけた真矢は突然意外な質問を受けてびっくりしていた。
「私はそうでもないな。やっぱり人は外見より中身だよ、うん。」
少し考えて頷きながら改めて答えた。
「ふーん。」
「そういうセツナはどうなの?」
「私はどうなのかな?気にした事無いから。」
本当に興味なさそうに言うセツナ。
「そっか、とりあえず到着っと。じゃあ、お大事にね〜。」
「今日は来てくれてありがとう。」
軽く手を振る真矢に少し照れながら子声で言った。
セツナはドアを開けて部屋に入った。
ベッドに身を投げ出して天井を見た。
{私は完全に真矢に情が移っている・・・。このままで良いのだろうか・・・。}
目を瞑り暫く考え込んでいた。


プルルルルル
考えている途中で何時の間にか眠っていたセツナは急いで起きて電話を取った。
「もしもし、雪志乃です。」
「セツナ。調子は戻ったか?」
いつもの男の声だった。
「お前を狙っていたシルバーチェイサーはお前から手を引いた。」
「なぜ!?」
流石に驚いてセツナは聞き返した。
「雇い主が殺された。それで、契約は破棄になった。もうお前が狙われる事は無い。」
「契約破棄は分かったけれど、もう狙われる事が無いって言うのはどういう事?」
納得が行かないセツナは再び聞き返した。
「一度殺せなかった相手は諦めるんだそうだ。過去にも数人いたそうだ。」
その言葉でセツナは納得した。
「とりあえずFAXを送る。もう動けるならその依頼をこなせ。無理なら無理と連絡をくれ。以上だ。」
「分かった。」
それだけ言うとセツナは電話を切った。その後送られてくるFAXに目を通している時の目は、殺し屋の眼差しになっていた。