天王の血
真矢は夢を見ていた。
良く夢は白黒で見ると言うが今夜の真矢の夢はカラーだった。
自分は誰かの視点になっている。
そして、その誰かは次々と人に襲いかかり方法は違えど殺して行く。
自分ではどうやっても止められない。ただ、ただ、視界が真っ赤に染まっていく・・・。
「!!!??」
真矢は飛び起きた。汗でびっしょりになっている。起き出してみるとまだ外は暗い。時計を見て真矢は着替えてもう一度寝ようかと思ったが寝るとまた夢の続きを見そうなので止めて着替えずにとりあえずテレビをつけてみた。
「本日午前0:00頃から0:30頃にかけて連続三件の殺人事件が起きました。三人とも暴力団関係者と見られ、事件を担当している霞賀裏警察署では抗争関連ではないかと見て捜査を進めております。次のニュースです・・・」
テレビのニュースと夢が何か気になったのでふと自分の手を見てみた。
「えっ!!??」
真矢は一瞬自分の目を疑った。血に染まっている。一瞬そう見えたがよくよく見てみると何とも無い。
「ふぅ。」
流石に驚いたが何とも無かったので大きく溜息をついた。
そして、落ちついてから真矢はシャワーを浴びに行った。
「セツナ・・・。」
夜明け前の裏路地で声をかけられた。セツナはゆっくりと振り向く。
「お前の近くにいる天王 真矢という女には気を付けろ。」
相手はいつもの男だった。ただ、言葉の真意が分からないのでセツナは首を傾げた。
「そうか・・・。セツナは天王家の血の事は知らなかったか。」
男の言葉に頷くセツナ。
「天王家は狂気に取り付かれている家系なんだ。そして、何時という明確な事は分かっていないが、若いうちにその血が目覚め自我が崩壊したり、自我が残っていても無差別に人を殺したり・・・いろいろなケースがある。無論狂気を押さえ込んだり受け入れきって平穏な一生を送った者もいる。平穏な一生を送れたのはごくわずかだ・・・。」
男の言葉を聞き終わって、セツナは特に興味無さそうに踵を返して歩き始めた。
「おはよう!」
「おはよう。」
いつものように挨拶を交わした二人だったが今日はセツナが真矢をじっと見ていた。
「ん?あたし何か変か・・・な?」
目をぱちくりして言う真矢。
「別に・・・。」
セツナは淡々という。
「なら良いや。」
真矢はにっこり笑っていつものようにセツナに抱きついた。
と、その瞬間真矢の頭の中に景色が突然思い浮かぶ。
「えっ!?」
その反応にセツナは不思議そうに真矢を見る。真矢はここではない別の何処かを見ているようだった。真矢には夜の景色と血まみれの手で立っているセツナが見える。
「セツナ・・・何で手がそんなに赤いの?なんで急に暗くなるの?」
セツナは「手がそんなに赤いの」にはほんの少しだけ反応したが、真矢が何を見ているのかが分からない。
「私の手は赤くないし、今は明るい。何を言っているの?真矢。」
冷静な声で言うセツナの言葉に真矢はふっと我に返る。目をぱちくりして辺りをキョロキョロ見る。
「確かに明るいよねえ・・・。うーん・・・あたし今日調子悪いのかなあ・・・また変な風になったら今日は保健室行こうっと。ゴメンねセツナ。訳の分からない事言っちゃって。怒ったりとかしてたら本当にゴメンね。」
セツナは軽く首を横に振る。
後は珍しく二人は黙って登校した。