発覚
1年前 6月20日 16:42
横山 秋子 中川 真
今年も例外無くうっとうしい梅雨がやってきた。屋外で行う運動部だけでなく、生徒達皆ウンザリしていた。
そんな中ひときわ元気な子がいた。横山 秋子である。
秋子は今日もせっせと会計の仕事をしていた。その途中で、ふと手が止まり不思議な顔をして腕を組む。
「おかしいな・・・。」
その言動を見て生徒会長の中川 真は読んでいた会報を置いて秋子に尋ねた。
「何がおかしいんだい?横山さん。」
「実は今気が付いたんですけれど、前の後期分の会計の出した金額と、実際に出ていった金額が合わないんです。しかも・・・何だか手を加えられた感じなんです。」
秋子の言葉に思わず真は「へっ?」という顔をした。
実は秋子の父は事務職に就いていて、秋子に会計学、つまり簿記などを良く教えていた。なかなか普通科しかない高校で生徒会の役員とは言え実際に会計学をやっている人はまずいないだろう。
真は驚きを隠せなかったが立ち直って再び秋子に話しかける。
「それで、どのくらいの金額が合わないの?」
あえて、「何故分かるの?」とは聞かなかった。
しかし、秋子は焦ってしまった。違うと言う事は発見したが、差がいくらかまではその時点では考えつかなかったからである。
「す、す、す、すいません。今計算します。」
秋子は慌てて電卓を机から取り出して叩き出す。
「ゆっくりで良いから確実にね。それみたいに間違っちゃ不味いからね。」
真は少し笑いながら言う。
そう言われて秋子は恥ずかしくなり耳まで真っ赤になって俯いた。
「とりあえず深呼吸すると良いよ。」
黙って固まってしまっている秋子に真は救いの言葉を投げかけた。秋子は言われるがままに深呼吸をした。一回するだけで大分落ちついた。
そして、改めて目をつぶって深呼吸した。そして、ゆっくりと目を開けた。
「会長。ありがとうございました。確実に出しますので出ましたら報告します。」
すっかりいつものペースと顔に戻った秋子を見て、真は黙って頷いた。
二人のやり取りを見ていた他の役員は、二人の話が終ると計算をしている秋子の邪魔にならない様に真と話を始めた。
キーンコーンカーンコーン・・・
6時の鐘が鳴っていた。秋子以外の生徒会役員は秋子を見守っていた。
「出ました!!!」
秋子が最後に電卓のイコールを押すとそこには数字が出ていた。
{500000)
「五十万!?」
真以外の生徒会役員は声を揃えて叫んだ。
「どうしてこの数字かはきちんと理由があるんです。実際に書いてある数字の違いです。似ているので誤魔化そうとしたのでしょう。「3」と「8」なんです。」
そう言って秋子は金額蘭に丸をしている所を見せる。
「なるほど。確かにぱっと見た目は印刷ミスにも見える。でも、何で合計額の時点でこんなに大きな額が分からなかったんだろう?」
真は腕を組みながら言う。
「それも、察しはつきます。きっと前任の会計の方と誰かが結託して事を進めていたと思います。」
秋子の言葉に全員が沈黙した。秋子は皆が黙っても続けた。
「誰が、いくら、を必ずつき止めて見せます。その時は先輩達のお力を貸して下さい。」
秋子はそう言って頭を下げた。
「当たり前だよ。はっきり言って私を含めて情け無い限りだね。頼むよ横山君。分かり次第その対処は私に任せてくれ。皆も全面的に横山君に協力してあげてくれ。」
真の言葉に全員が頷いた。そして、更に続ける。
「これからが、本当の私達の腕の見せ所だ。良いかい。この事は全てが分かるまで生徒会外部には絶対に話さない様に。いいね。」
この言葉の影に1人だけ心で頷かない人間がいた。その人間によって事実は保積 賢に伝えられ難を逃れた・・・。