プロローグ

暁 静
5月20日 15:15

暁 静はその日中学の時の先輩である横山秋子に呼ばれていたので生徒会室に急いでいた。静は放課後の廊下を歩きながら、
「横山先輩、私に一体何の用かしら?」
首を傾げながら呟いた。
そして、生徒会室の前に来た。ドアに手をかけるといつもはしっかり閉まっている筈のなのに少し開いている。不思議に思いながらも秋子に呼ばれていたので、気にせずに静はドアを開けた。
「失礼します。横山先輩はいらっしゃいますか?」
静は中に入る前に尋ねたが返事がなかった。
返事をするべき相手は目の前にいる・・・。
普通の人間ならば、目を見開いて驚くとか、悲鳴を上げる所なのだろうが、そういう視覚と言うものを静は持ち合わせていなかった。つまり盲目なのである。生まれつき目が見えない体だった。その代わり五感の残りの四感は敏感だった。だからこの時も微かに血の臭いがしたのである。まず、普通の人間にはわからない、本当に微かな匂いだった。
(血の臭い?横山先輩?)
何が起こっているのか混乱して状況判断が出来ない静の耳に廊下を走ってくる足音が聞こえた。