アイドルアルティメイト後の風景


 アイドルアルティメイト決勝戦終了後、ミキとプロデューサーは打ち上げパーティーに来てた。
「ねえ、ミキの食べたいものないから、帰ってもイイ?」
「もう少し我慢しろって」
 さっきまでが嘘みたいに、また、わがままを言う美希に、俺は苦笑いしながら釘を刺した。
「おめでとう・・・ございます?」
「あっ!絵理なの」
 声をかけられてミキが振り向いたら、絵理と寄り添うように玲子がいた。
「おめでとう」
「尾崎さん。ありがとうございます」
 俺は、尾崎さんの方にお礼を言った。
「絵理、ちょっとこっち来てなの」
「・・・わたし?」
 ミキは思いついたことがあったから、絵理を連れてプロデューサーと玲子から離れた。
「おいおいおいっ!美希っ!すいません、尾崎さん」
 尾崎さんに挨拶もしないで、水谷絵理を連れて行く美希を止めたけど、すり抜けられて行っちゃったので、ペコペコ謝った。
「いえいえ、星井さんが絵理と話したいことがあるんでしょうし、優勝のお祝いということで。しかし、今日の星井さんは凄かったですね」
「実は、俺が一番驚いてたりします」
尾崎さんから許しが出たのでホッとしながら、聞かれたことに素直に答えていた。

「優勝・・・おめでとう?」
「うん、ありがとう」
 にっこりした顔で言われたミキは、嬉しくてにっこり笑いながらお礼を言った。
「それで・・・なに?」
「今日まで絵理に負けてた理由と、今日ミキが勝った理由が分かったの」
「・・・聞きたい?」
 ズイッと寄ってマジメな顔で聞いてくる絵理にミキはちょっとニヤリと笑った。
「あのね、今日までは、絵理と玲子が・・・」
「尾崎さんの名前呼び捨ては、優勝した星井さんでも・・・許さない!」
「え、えと、じゃあ、玲子・・・さんならイイ?」
 目がマジで首を少し絞められて言われたミキは、ヤバイと思って聞き返した。
コクコク
「じゃあ、言い直すの。今日までは、絵理と玲子・・・さんの仲がスゴク良かったから、ミキ負けてたの」
 絵理が頷いて、絞めてた首から手が離れたのをが分かってから、ミキは言い直し始めた。
「フフフ・・・じゃあ、今日は?」
「ミキとプロデューサーの方が仲が良かったの♪」
 ミキは抱きしめられて温かかったことを思い出しながらうっとりして言った。
「それは、聞き捨て・・・ならない?」
「じゃあ、絵理は玲子・・・さんとギュって抱き合ったことある?」
 キランッって目が光って言ってきた絵理だったけど、ミキはビビらないで目を細めながら聞いた。
「抱き・・・合う?」
「そうなの。絵理からだけとか、玲子・・・さんだけからじゃないの。2人で一緒にギュって、温かいのとか、キモチが伝わるくらい長い時間なの」
(とっても、キモチよかったの・・・)
 絵理に不思議そうに聞かれたミキは、答えながら目を閉じて思い出してた。
「・・・・・・そこまでは・・・ない・・・」
 答えを聞いてミキが目を開けると、絵理はスゴクショックを受けたような顔してた。
「だから、そういうコトなの」
「・・・・くやしい」
「くやしがるコトなんて無いの」
くやしそうと、うらやましそうが混じったカンジで言ってくる絵理に、ミキはかるく答えた。
「・・・なんで?」
「だって、今そうじゃなかったら、これからそうすればいいの♪ミキ去年はそういうのなかったから決勝で負けたし、今年も今日まで絵理に勝てなかったの。でも、今日やったら勝ったの。だから、これから仲良くすればいいと思うな」
 よく分かってなかったみたいだから、ミキは説明した。
「・・・目から、ウロコ?」
「目からたらこ?」
『ん?』
 良く分からなかったミキは思わず目をぱちくりしながら絵理と顔を見合わせちゃった。
『ぷっ』
その後、一緒に吹きだしちゃってた。
「あはっ」
「・・・フフッ」
「もどろっか?」
「・・・・うん」
笑いあった後、ミキが言って絵理から返事を聞いて一緒に戻っていった。

「なるほどねえ。本人の積極性を大事に・・・か。勉強になるわ」
「こっちも、どうすればアイドルを輝かせられるかって言う話は、凄く勉強になります」
 俺は尾崎さんと色々話していて、凄く話の分かる人だったので、思わず話し込んでいた。
「・・・む」
「む〜っ!」
(きっと絵理も同じ気持ちなの)
 隣から絵理の声が聞こえて、ミキは玲子と仲良さそうにしてるプロデューサーを見て、ムッとしていた。
ズカズカズカッ!
「・・・尾崎さん?」
「なっ、何、絵理?」
「うん?水谷さん?」
(うわっ!何かすげえ睨まれてる!?)
 水谷絵理と尾崎さんの声がしたので、そっちを見たら水谷絵理に鋭い視線で睨まれていたので、俺は少し仰け反った。
尾崎さんへはニコニコしてるけど目が笑ってないので、尾崎さんは顔が引きつっていた。
「プーローデューサーっ!」
「ん?美希、どうした?話は終わったのか?」
 反対から声がして見たら、ぷくーってふくれてる美希が居たので、俺は普通に聞いた。
美希の怒った顔とかふてくされた顔は、見慣れてるから、たじろいだりしない。
「玲子となか・・・」
「・・・呼び捨て・・・禁止?」
「えと、玲子・・・さんと仲良いの禁止なの!」
 途中で寒気がして、絵理にスゴイ顔して睨まれたミキは、言い直してからムッとした。
「まあ、犬猿の仲って訳じゃないし、凄く話の分かる人なんで、色々教えて貰ってただけだよ。これからの美希のアイドル活動にも役立つ話を聞けたりしたんだ」
 俺は美希がなんか勘違いしているっぽいので、普通に説明しながら言った。
「そうなんだ?」
「・・・尾崎さん?」
 ミキと一緒に絵理も玲子の方に聞いた。
「ええ、そうよ。お互いに有意義な情報交換が出来たと言う所ね。絵理も戻ってきたことだし話は済んだのかしら?星井さん?」
「・・・・・・・・・。うん、話は終わったの」
(う〜ん、ウソは言って無いみたいなの)
玲子の瞳を見たらウソ言ってなさそうだったから、ミキは質問に答えた。
「じゃあ、今日はこの辺で。尾崎さん、ありがとうございました」
 俺は軽く会釈しながらお礼を言った。
「こちらこそ、色々とありがとう」
「む〜っ!見詰め合わないで〜っ!」
 ミキは視線の間に割って入って叫んだ。
「・・・プロデューサーさん?」
「ええいっ!話をややこしくするな!」
ずびしっ!
 鋭い眼光で水谷絵理に睨まれた俺は、苦笑いしながら美希にチョップをくれた。
「あうっ!?」
「ほら、行くぞ」
痛がってる美希の手を引いて、俺はその場から離れた。
(えへへ、痛いけど、ラッキーなの♪)
 ミキは繋いでない左手で頭をさすりながら、プロデューサーが握ってくれてる右手に力を込めた。