剣士への道(Bellcess Side)

あたしが家を飛び出してから一年が過ぎようとしていた。
あたしは、プロンテラ周辺の散策も兼ねて修行していた。母さんがくれたナイフは今使ってないけど、大切に持っている。お金も大分貯まったし、そろそろ剣士になれるかどうか聞きに行ってみようかと思い、プロンテラの剣士ギルドの前に来ていた。
「こんにちはー。」
あたしは元気良く中に入ったが気のせいか全くといって良いほど活気がない。と言うか人気すらないんだけど・・・どういう事???
「ん?誰だ?荷物の配達か?」
奥からがっしりしたいい年したおっちゃんが出てきた。
「えっと、ここって剣士ギルドだよね?」
「ああ、そうだぞ。だがな、今はイズルードに移動になった。試験やなんかはイズルードでやってるぞ。ここは開店休業状態だ。」
「ええっ!そんなー。イズルードなのー?」
あたしは流石にショックだった。イズルードじゃ、誰かに見つかっちゃうかもしれないよー。
「くどい!ここでは何もやっておらん。見れば分かるだろ。」
流石にしつこかったのかおっちゃんは怒って言った。
「お邪魔しましたー。」
もうがっかりだよ・・・。でも、行かないとなあ。剣士になって騎士になるんだ。そう、あたしは騎士になるって心に決めているんだ。
食料を買い込んで早速プロンテラを後にしてイズルードに向かった。
「あんまり、おどおどしたりするとかえって怪しいかな。よし、いったるかー。」
イズルードの門の前で開き直って気合を入れてから中に入った。
(うわー。変わってないなあ。)
お店の人とかに挨拶したいのをぐっとこらえて、剣士ギルドの場所を聞いてからすぐに向かった。
(ここだな・・・。よしっ!)
「こんにちはー。」
元気良く中に入ると中はごった返していた。あたしは人を掻き分けて奥のカウンターへ辿り着いた。
「すいません。剣士になりたいんだけど、どうしたら良いの?」
「ふむ・・・。」
あたしが質問すると話し掛けたおっちゃんはジロジロとあたしを見ている。良く分からなかったのであたしは不思議そうにおっちゃんを見返していた。
「お前は資質はある。剣士になりたいのなら試験を受けろ。それに合格したら剣士として認めてやろう。」
「ホントに!?やるやるやるー。」
「はっはっは。面白い坊主だな。なら、隣の部屋に案内人がいるからそっちから説明を受けてくれ。」
(あたし女なんだけど・・・。しょっちゅう間違えられるんだよね。まあ、気にしてないけどさ。)
「オッケー。」
あたしは喜び勇んで隣の部屋に入った。中にはあたしと同じく試験を受けるような感じの人が何人かいた。キョロキョロしていると、お兄さんが声を掛けてきた。
「君も試験を受けるのかい?」
「うんっ。」
「それじゃあ、こっちに来てね。説明するから。」
お兄さんについていくと、随分と広い場所に出た。
「ここはね、剣士の資質を試す修練場なんだ。ここからゴールに辿り着けたら君は晴れて剣士になれる。ゴールを目指して頑張って。もし、途中で駄目だと思ったらこれを使うと良いよ。」
そう言ってお兄さんは蝶の羽っぽいのをくれた。
「それじゃあ、僕はこれでね。」
「ありがとー。おーし、いったるよー。」
あたしは早速進み始めた。見かけたモンスターが居たけど今のあたしの相手じゃない。ソードで倒して進んでいった。
途中で細い橋にさしかかった。前に居る何人かは落ちているのが見えた。下は真っ暗だ。
「うひゃー。やばそー。」
あたしはほっぺを叩いて気合を入れて慎重に橋を進んでいった。橋の途中にモンスターが居る。モンスターの何体かも橋が揺れて落ちていくのも居る。
「うげげげ。なんてとこだ。」
少しすると、下から騒ぐ声が聞こえる。下にも人いるのかー。
(落ちた人は大丈夫なのかな?)
ふと思ったが、そんな事はどうでも言い訳で、今は目の前のモンスターと揺れる橋が大問題だ−。
真ん中付近に差し掛かって揺れの酷さはピークに達していた。これってさー。下手すると酔っちゃうんじゃないのかな。途中で吐いてた人いたし・・・。
目の前には微動だにしない芋虫と待ち構えてるんだかどうだか分からない大きなハエが何匹かいる。あたしは居を決して突っ込んだ。
芋虫はあっけなく片付けたけど、ハエを切る時バランスを崩して落っこちそうになった。
「どわーーーーー!」
何とか、片手だけで橋につかまっているけど、大ピンチ。
「いて、いてっ。」
こんな状況でもハエは容赦なくぶつかってくるし。
「んにゃろー。なめんなー。」
あたしは橋の揺れを利用して振り子の要領で一気に橋の上に乗って、向かってくるハエをソードで一刀両断した。
「ふいー。危なかった。」
その後は無難に何事も無くゴールまで辿り着いた。ゴールにはプリーストさんがいた。
「はい、良く頑張りましたね。これをカウンターで見せると良いですよ。」
そういってから一枚のプレートを渡してくれた後あたしを魔法?で送ってくれた。
「おっちゃーん。はい、これ。」
あたしはプリーストさんから貰ったプレートを見せた。
「ほう、やるな坊主。お前を剣士と認めよう。そのプレートがその証だ。更なる修行を積むといい。」
「よっしゃー!頑張るぞー。」
あたしはガッツポーズをした後、すぐに剣士ギルドを後にした。
ちょっとゆっくりしたいとこだけど、ばれちゃ不味いから早くイズルードを出なくちゃね。名残惜しい気もするけど、ここで戻るつもりも無いし。
あたしはすぐに食料と水だけ調達してイズルードの出口まで来た。
「よーし、頑張って騎士目指すぞー!」
周りの人は何事かと見ていたけど気にせず、再びプロンテラに向かって歩き出した。