砂漠を目指して(Sealia Side)

皆様初めまして。
私、シーリア・スターと申します。お目にかかれて光栄です。
私は今、両親の遺言に従って首都プロンテラを目指しております。
両親は最後に私には不思議な力があるとの事で、プロンテラの修道院に行きアコライトとなり世の為、人の為に尽くしなさいと言われました。
近所の方にもご協力頂き、今首都プロンテラを目指しています。
出来れば、近いアルベルタから船を使いイズルードを経由していけばかなりの日数短縮になるのですが、残念ながら船に乗るだけのお金がありません。
そう言う訳で、砂漠を通り抜け直接プロンテラを目指している次第です。

「今夜はここで眠る事にしましょう。」
私は木の根が少し浮いていて、穴になっている場所を見つけて中に入る事はせず、そのまま木の根に寄り掛かった。
「まだ、砂漠につく気配もありませんねえ。プロンテラの修道院へ行き修行してアコライトになって、父や母の言う通り、病気や怪我で苦しんでいる方達を救いたい。」
私は両親の形見であるペンダントを見つめながら呟いた。
空を見上げると木々の間から綺麗な月が見えていた。見ているうちに眠くなり、私は眠気に逆らわず眠りについた。

気持ち良い朝を迎えた。
「今日も頑張って歩きましょう。おや?」
ふと目を向けると、怪我をした狸がいた。この辺では珍しくないスモーキーですね。痛そうにして、足を引き摺っている。
「可哀相に。」
私はスモーキーに近付いて、怪我をしている足に手をかざした。そして傷が塞がった。これが、私の不思議な力。なんでも、修行を積んだアコライト様やプリースト様が使えるらしいのですが、私には生まれてからこの力があるのです。
怪我が治ったスモーキーは驚いていた。
「くすくす。良かったですね。さあ、森へお帰りなさい。」
私がそう言うと、スモーキーは器用にお辞儀してから草むらの中に消えていった。

あれから、一週間未だに深い森から抜けれないでいた。
「参りましたねえ。確か地図だとそろそろ砂漠のはずなんですが、一向にそんな気配がありませんね。」
私は空を仰いで溜息をついた。ふと、足が引っ張られているのに気がついた。
「おや?」
足元でスモーキーが私の裾を引っ張っている。私はしゃがみ込んでスモーキーに話しかけた。
「どうしたんですか?前のスモーキーさんとは違いますね。」
スモーキーはキューキューと鳴いた。
「ふむふむ、苦しんでいる仲間があちらにいるんですね。良いですよ、参りましょう。」
私はスモーキーの案内で草むらから分け入って森の奥へと進んでいった。この、動物の言葉が分かるのも私の不思議な力の一つかもしれませんね。

そして、何処をどう通ったのか分かりませんが、急に開けた場所に出ました。
真ん中に一匹大き目のスモーキーがいて、それを取り囲む様に沢山いました。
私の姿を見て、一匹のスモーキーがお辞儀してきました。
「あの時の方ですね。良かったら、様子を見させて下さい。」
周りにいたスモーキー達は私の姿を見てギョッとしていましたが、様子を見る事自体は許してくれたみたいで、道を空けてくれました。
見てみると、傷口があって、そこが変色していました。多分毒でしょう。
「皆さん大丈夫ですよ。多分毒ですから、すぐ良くなりますよ。」
私は周りのスモーキー達を安心させてから、傷口に手をかざした。変色した部分が元に戻り、傷口も塞がった。
「はい、これで大丈夫ですよ。顔色も良くなりましたから直気が付きますよ。」
私の言葉に、スモーキー達は喜んでいた。人でなくともこうして喜ぶ姿を見ると、私も嬉しくなります。

暫くして気が付いたスモーキーさんの案内で私は半日余りで砂漠の入口らしい所に着く事が出来た。
「ありがとうございます。道案内して頂いた上にこんなお土産まで頂いて。」
私は深深と頭を下げお礼を述べた。スモーキーさんの方が変に恐縮して手を振っている。
「それでは、失礼致します。」
私は別れを告げて、いよいよ砂漠へと足を踏み入れた。
(プロンテラに無事つけるでしょうか?)
照りつける太陽に目を細めながら私は少し不安になっていた。