いきなり異世界hirarin Side

 いつものように目覚ましよりも早く目が覚めた。が、しかしいつも見慣れた部屋の風景とは全然違う。草原の草の上にいる。
(???)

まだ夢でも見ているのかなと思い、眠かったのもあったのでそのまま再び眠りについた。

どのくらいたったのか分からないがそのまま目を覚ますとやはり風景は変わらない。
(私にどうしろと?)
キョロキョロしながら思わず自分の中で突っ込みを入れてしまう。
裸でないのは幸いだが見事にパジャマ姿に靴下のみ・・・。
会社・親父殿・親友・パソコン・ゲーム・TV・カラオケ・・・何にも無いし、誰もいない・・・。
せめて出社途中ならカバンもスニーカーもあったのに・・・って違う。
草原を吹き抜ける風はとても爽やかで気持ち良かったが、この状況に暫く私は混乱していた。

まずは、食べ物・飲み物それに着る物が必要かな。」
少し落ち着いた私は誰に言うでもなく一人で呟いてから、歩き出した。
運良く少しすると看板があった。しかし・・・。
(よ、読めない・・・(汗))
ここで私はもう一つの不安が頭をよぎった。
(言葉が通じなかったらどうしよう・・・)
看板は2方向を指していた。迷った挙句に私は文字数の多い方を選んで歩き出した。

「しかし・・・薬も栄養剤も無いですし。病気が再発したら終りですかね。」
一人で呟きながら歩いていると旅人らしい人物が向こうから歩いてくる。
「あのー。すいません。」
(頼む!通じてくれ!)
私は祈りつつ声をかけた。
「ん?どうしたんだい?」
(やった!通じる。)
「この先にはなんていう街があるんですか?」
飛び上がって喜びたいのを抑えながら相手に少し質問する事にした。
「プロンテラって首都だよ。兄さんこの辺は初めてなのかい?」
「ええ、それで文字とかを習いたいのがありまして、迷いながらもここまで来ました。看板の文字が読めなくてどうなのかなあと思いましてね。」
私はなるべく言葉を選んで答えた。
「まあ、後2時間も歩けば着くと思うぞ。」
「ご丁寧にありがとうございました。」
私は一礼してその旅人と別れた。
(言葉が通じれば何とかなるかな。)
私は希望をもって首都プロンテラという場所へ向かった。

近付くにつれて城壁や、城の大きさが分かる。
(うわー。大きくて立派だ。)
生で西洋の城を見た事が無かった私は興奮気味だった。
プロンテラに近付くと人通りが多くなってきた。それと同時に私は注目を集めていた。
(しまった!パジャマだった)
私は急いで服が売っている所を探した。

30分程して何とか一軒の店を見つけた。
パジャマをずいぶんと珍しがってくれて、偉く高いお金で買い取ってくれた。洗濯しても大丈夫な事を教えたら、更に普通の旅人用の装備品をおまけでつけてくれた。
何度もお礼を言ってから店を後にした。
「とりあえず、街中でも見て回りますかね。」
楽しみ半分、現実逃避半分でプロンテラ観光を始めた。
多くの露店があり、見たことも無いものも沢山売っていた。
私はすっかり時間を忘れていろいろな物を見て、いろいろな人に商品の説明などを聞いた。
一軒の道具屋で、片眼鏡が売っていた。
アクセサリーで昔から興味はあったものの実際に買うには至っていなかった。
金額を見て、結構趣向品なんだなと思った。
今後の生活の事もあるので買うのは控えることにした。

そんな事をしているうちにすっかり日が暮れようとしていた。
「参りましたねえ・・・やはり宿屋さんとなるんですかねえ。」
近くで宿屋の場所を聞いて早速向かった。
「いらっしゃいませー。」
営業スマイルたっぷりのお姉さんが出迎えてくれた。
「すいませんが、普通の一人部屋は空いていますか?」
「はい、一晩ですか?長期滞在でしたら割引サービスもありますよ。」
私はお姉さんの言葉にちょっと考えを巡らせた。
「とりあえず、今夜の分を先払いさせて頂いて、長期になるようならそれに上乗せということでも構いませんかねえ?まだ、どうなるかは分からないので。」
「はい、構いませんよ。じゃあ、こちらが鍵になります。二階の一番奥の左側になります。何か分からない事とかあったら聞いて下さいね。」
はきはきとして気持ち良いトークのお姉さんに私は好印象を抱いた。
「ええ、その時はお願いします。」
私は鍵を受け取ってから二階へと上がっていった。

部屋に入ってベッドに身を投げる。
(これだけ長くて鮮明な夢・・・だと良いんですが・・・)
天井を見つめて会社の事とかを思い出していた。
(今日は良く歩いたんで疲れました。このまま眠りましょうか)
私はそのまま布団をかぶって、
(これが夢であるなら早く覚めてくれ。)
と思いながら眠りについた。