〜Before Story〜 PULEA(プレア)中編



〔プレア様!先程のデータにあった、衛星軌道上の牢獄船ガイラが大きく軌道を変えました。〕

かなり良いペースで進んでいたプレアにPULAから緊急割り込み報告が入った。
((どういう事なんやぁ?軌道を逸れて、何処に行くか計算出来るかぁ?))
〔妨害電波や、色々なものが混じってここからでは計算は出来ません。プレア様ご自身が目視出来る場所まで行って頂き、そこから数秒見て頂ければどこに向かうか分かるとは思います。しかし、その分今まで来た道を引き返す事になり、マザーブレインへの到達の遅れと共に相手側に迎撃準備の時間を与える事になります。最終判断はプレア様にお任せします。〕
PULAは少し困った様に選択肢を提示した。
(このまま一気にマザーブレインに突撃してうちの本懐を遂げるのが筋。せやけどガイラがもし何処かの惑星に落ちるなんて事になったらぁ・・・。)
プレアは敵からの攻撃を避ける為に物陰に隠れながら思案していた。
〔ガイラが落ちた惑星はかなり危険な状態になると思います。マザーブレインの暴走も先程のデータで正しいとしたら、惑星の環境システムにも異常が起きて、惑星自体の存続も危険かもしれません。この両方の相乗効果を加味した場合、その惑星は・・・滅びる可能性が高いと思われます・・・。〕
「・・・。」
直結しているPULAからの言葉にプレアは思わず黙り込んだ。
(うちは、うちはどないしたらええんや・・・。マザーブレインを破壊するんは、パルマ・モタビア・デゾリスを救う為やないんかぁ!)
プレアはその場で頭を抱えて錯乱し始めていた。
〔プレア様。お気を確かに!可能性は低いですが、ガイラを止められるかも知れません。〕
((ほんまか?はんまに出来るんかぁ!?))
PULAの進言にすがるように聞くプレア。
〔見える所からガイラに向かって私もしくは他の上級官吏プログラムを何かに乗せてガイラへ打ち込むのです。そして、そのプログラムが軌道修正、もしくは軌道変更すれば最悪の事態は免れるかも知れません。ただ・・・。〕
((ただ、何や?))
プレアは怪訝そうに聞き返す。
〔マザーブレインがプレア様のような影響力を持っていてプログラムが無効化されたり、ガイラの暴走が手におえない可能性もかなりあります・・・。〕
苦しそうにPULAが答える。
「決めた!可能性がゼロやないならうちは行く。PULAはうちのサポート役として離せへんさかい代わりにALPUに行って貰う。この宇宙船の一番外側から撃ち出して一気にガイラへ入れる。後は出たとこ勝負やわぁ!」
プレアはそう言ってから、一気に宇宙船の外側に向かって両手を当てて穴を開けた。

宇宙船の一番外側に着くにはさして時間は要さなかった。ただ、ガイラの状態はPULAが計算する必要も無く一目瞭然だった。
「あかん!どう見てもパルマに向かってるわぁ。間に合ってやぁ!!!」
プレアは外壁に小さな穴を開けてそこから小型のポッドを撃ち出した。打ち出し終わったと同時に穴を塞いで、ポッドとガイラの様子を見つめていた。
ポッドは見事にガイラに命中して、中に入り込んで行った。
〔プレアサマ、モウシワケゴザイマセン。ガイラメインコンピュータボウソウ。スデニ・・・テオク・・・レ・・・・。〕
雑音に混じって、ALPUからの通信が入ったが、途切れ途切れになって行き、段々と聞こえなくなっていって最後には通信が完全に途絶えた。
((ALPU!既に手遅れってどういう意味なん?答えんかいっ!))
プレアの悲痛な叫びにも、ALPUから答えが帰ってくる事は無かった。その後、プレアは力無くうな垂れた。
〔プレア様・・・。パルマが・・・。〕
PULAの言葉に、プレアが顔を上げると丁度パルマにガイラが衝突した瞬間だった。
パルマは墜落したガイラだけの影響だけでなく、内部からも複数の光が見えて爆発した。
それは、マザーブレインの暴走を暗に物語っていた。
「パルマが・・・壊れて・・・しもたぁ・・・。悔しいくらい・・・綺麗やんかぁ・・・。」
〔プレア様・・・。〕
派手な閃光と共に爆発したパルマを見て肩を震わせながら言うプレアに、PULAは内心を察するように静かに呟いていた。
「分かってるわぁ・・・。こんな所でへこんでてもしゃあない。このままやと、モタビアやデゾリスも危なくなるかもしれへん。一刻も早くマザーブレインを破壊せなあかん。そうやなPULA?」
〔はい、おっしゃる通りです。プレア様、先程のALPUからの断片的なデータが一部ですが遅延して届きました。どうやら、パルマからの宇宙船がガイラから何名かの囚人を連れて行ったようです。ただ、データがかなり壊れていてこれ以上の詳細は不明です。〕
PULAは返事をした後、プレアに報告した。
(さよか、完全に全滅やなかったんやな。それだけでも良かったわぁ・・・。)
プレアは報告を聞いた後、目を閉じて少しだけ微笑んだ。
「よっしゃ、改めて行くでぇ。PULA以下サポートよろしゅう!」
〔我らはプレア様の為に全力を尽くします。〕
目を開けた後、はっきりと言ったプレアにPULAはプログラム達を代表して答えた。
ゴギャンッ!ドガッ!
少し進んだ所でプレアは大型ロボットにパンチの一撃を貰って、壁まで吹き飛ばされて叩きつけられた。綺麗な青色の装甲の一部がへこんだが、体勢を直して立ち上がる頃にはそのへこみも元通りになっていた。
「このぉ!でかけりゃええっちゅうもんやないわぁ!!!」
そう叫んで、プレアは大型ロボットに突っ込む。
プレアも2mをゆうに越えていたが、相手は4倍以上ある大きさだった。再び繰り出されるパンチに今度は合わせる様にプレアも手を出す。
双方がぶつかって触れ合った瞬間、プレアの手が大型ロボットの腕に同化すると大型ロボットの動きがピタッと止まる。
反対側から間髪入れずにもう一体の大型ロボが襲い掛かってくるが、そっちもプレアの手が触れる事で動きが止まった。
更にもう一体が襲い掛かった瞬間、両手に同化していた大型ロボットがグニャリとなって、間の空いている三本刃の大きなブレードになる。刃だけで5m近くあるものだったが、その大きさとは思えない速さで目の前に襲ってきた大型ロボットを八つ裂きにしていた。
青く光る刃は更に形が変わって、今度はロングキャノンになって遠くから来る敵を破壊していく。
((PULA!マザーブレインへの到達予想距離は後どんなもんやぁ?))
〔後、1000です。ただ、同化していたロボット達のデータから推測すると、途中に防衛ラインが引かれていると同時に隔壁が何枚かあるようです。隔壁は問題ないと思いますが、防衛ラインには注意して下さい。相当時間が費やされる可能性があります。〕
((分かったわぁ。今のうちを邪魔出来る雑魚はおらへんわぁ。))
プレアはPULAに答えつつ、勢いを増して突き進んで行った。
そして、防衛ラインを三つを突破し、ついに最終隔壁の前までたどり着いた。
「ついに辿り着いたわぁ。ってなんやこれぇ?」
最終隔壁の前に箱らしきものが置いてある。それを、プレアは不思議そうに見下ろしていた。
〔宝箱かと思われますが。今は放置しておいて宜しいかと。〕
((せやな、マップとして残った空間の向こう側にマザーブレインがおる・・・。))
プレアが最終隔壁に右手を伸ばすと、どんどんと手に隔壁が吸い込まれて行く。プレアは少しずつゆっくりと前に歩いていく。隔壁は10m程でなくなり大きな空間へと出た。

「ようこそ・・・青きものよ・・・。」
真っ暗な空間に静かな声が響く。真っ暗ではあったが、センサーのついているプレアは瞬時に部屋の形などを把握していた。
「あんさんがマザーブレインやな。」
プレアがそう言うと一気に辺りが明るくなる。
そして、目の前に大きなものが姿を現した。アルゴル太陽系を象徴するような三つの惑星をかたどったものを体の一部にして、その名の通り女性を思わせる形をしていた。
そして、その体は虹色でその色は常に変化していた。
「その通り。私はマザーブレイン。アルゴル太陽系を管理するマザーコンピュータ。貴方は?」
「うちはプレア。あんさんを破壊する為に作られたロボットや。」
プレアは聞かれて素直に答えた。
「ふふふ、私を破壊する?私が壊れればアルゴル太陽系の惑星の環境はおかしくなり大変な事になる。貴方は私を傷つける事すら出来ないはず。」
マザーブレインは余裕を持った言い方をする。
「ふんっ、そんな事は承知の上やわぁ。お前の存在が惑星の住人達にあぐらをかかせて今まで過ぎて来たんや。それでええと思っとった人が殆どやけど、あんさんの存在に疑問を持ったお人達がうちを作ったんや。自分で気付いておらへんかもしれんけど、あんさんは既に暴走しとる。おとなしゅううちに破壊されればそれで事は丸く収まるんやぁ。」
プレアは少しマザーブレインを小馬鹿にしたように言った後、自分の持っている武器を構える。
「なるほど・・・。良いでしょう。相手になってあげましょう。プレア、貴方は優秀なロボットかもしれない。しかし、たった一体で私に立ち向かう愚かさを、その身を持って知る事になるでしょう。」
マザーブレインは静かにそう言うと、左右二本ずつある腕の内左右の一本ずつを天井にかざすように上げる。
「ほざけっ!うちはお前を破壊する為に作られたんや!そっちこそ覚悟しいやぁ!!!」
プレアはそう言うと、マザーブレインに向かって武装の全てから実弾、レーザーなどを一斉に発射した。

ここに、プレアとマザーブレインの戦いが切って落とされた。
この時、ユーシス達はダークファルスとの戦いに苦戦しながらもネイソードの光によって勝利を収めていた。