温泉でびっくり(プロローグ)

「あーあ、つまんねえな・・・。」
ハオは天上を見上げながら呟いた。
(クリスマスは散々だったしな・・・。)
少し溜息をついて目を瞑った。
「ハオー。ちょっと来なさい。」
(ん?何だ?)
ハオは母親から呼ばれて、起き上がって部屋を出た。
「おっ、カル姉と姉貴。久しぶり。今日はどうしたんだ?」
ハオが行ってみると二人の姉が久しぶりに帰って来ていた。
「いやねえ、ハオにお願いがあってね。」
「カル姉の場合はなあ・・・内容によるかな。」
カル姉と呼ばれているのはカルーネだった。
「実は同じお願いなんだけどね。」
「姉貴もかよ。微妙だな、おい。」
当然姉貴と呼ばれているのはカルーネの妹のシェイリーだった。
「姉さんだとややこしくなるかもしれないから、単刀直入に言うね。」
「おう。」
「出掛ける先の人数合わせに来て欲しいのよ。」
「何だそりゃ?」
ハオはシェイリーの言葉にジト目になりながら言った。
「お世話になった人からね、温泉のお誘いが来たんだけど、全然男がいないらしくて、数少ない男の話相手が欲しいんだってさ。」
カルーネがそれを付け足す。
「先にそれ言えよ。で、日程は?」
「やったー。ハオ大好き!」
「抱きつくな!w」
ハオは抱きつきそうになるカルーネを慣れた動作で避けて、シェイリーの方を向く。
「えっとね、明々後日から5泊6日。」
「長っ。まあ、アカデミー休みだからいいか・・・。とりあえずOK。着替えだけで後はいらないのか?」
「何か向こうで殆ど用意してくれるらしいから、着替えだけで良いんじゃないかな。」
「分かった。じゃあ、俺知り合いに出かける事だけ知らせてくるわ。当日は姉貴達が迎えに来てくれるのか?」
「うん。そのつもりだから、用意して待ってて。」
「うぅ・・・。」
二人で話をしている間で下から声がする。
「あれ?いつまで寝てるの姉さん?」
「ほっとけw」
さっき、ハオに避けられた時に倒れ込んでいたカルーネだったが方って置かれっ放しだった。
「シェイリーはボケだから仕方ないけど、ハオは助けてくれたっていいじゃない。」
「知るかwそれにカル姉が姉気の事ボケなんて言えねえだろ。」
鋭い突っ込みでカルーネを黙らせたハオは、シェイリーに軽く手を振って部屋へ戻っていった。
「何か、ハオ機嫌悪いね。」
「姉さんのせいでしょ。」
「ちぇ。」
カルーネは舌打ちしながら起き上がった。
「まあ、温泉で機嫌直してくれればいっか。」
「そうね。」
カルーネとシェイリーはそう言って軽く笑いあってから、両親に挨拶する為に移動した。

「ったく、しょうがねえな。相変らずな姉貴達だ。」
苦笑いしながらハオはチャオ宛にビジフォンを鳴らしていた。
「「はい、チャオにゃ。」」
「よっ。」
「「おお、ハオ。どうしたにゃ?フェリーかにゃ?」」
「いや、チャオ達皆かな。」
「「にゅ?」」
ハオの言葉に不思議そうに首を傾げるチャオ。
「あのさ、俺明後日から、暫く出かけるからさ。」
「「そっか、でもにゃ〜。」」
「ん?」
今度はハオの方が不思議そうな顔をする。
「「別にフェリー以外は困らないかにゃ〜っと。一番用事あるのってフェリーだろうし。」」
「まあ、そうなんだけど一応な。」
「「フェリーに直接言い難い事でもあるのかにゃ〜。」」
チャオはそう言ってジト目でハオを見る。
「無えよ。じゃあ、伝えたからな。」
それだけ言ってハオはビジフォンを切った。
「さて、次々っと。」
ハオは続けてテムの所へビジフォンをかけた。
「「はい〜てむで〜ふ。」」
「よう。」
「「おお、はおさん。めずらしいですねぃ。どうしたんれたす〜?」」
「俺明後日から暫く出かけるからそっちに顔出せねえ。」
「「それはざんねんでぅ〜。」」
テムはちょっと悲しそうに言った。
「悪いな。でも、その後にまたちゃんと顔出すからよ。」
「「わかりますたぁ〜。でわでわおきをつけてぇ。」」
ちょっと涙混じりにいうテムを見て何か言おうとしたが黙って頷いてハオは切った。
「後はトロか・・・。」
ハオは再びビジフォンをかけた。
「「いやっほーい。トロだよーん。」」
「元気だな、おいw。」
「「おお、これはこれはハオじゃないのさ。今日はどうしたのかな?」」
「俺明後日から暫く出かけるからさ。」
ちょっと元気過ぎるトロに圧倒されながらも冷静に言うハオ。
「「ええっ!?もしかしてフェリーの姉さんと!?」」
「まてw違えよ。家族と出かけるんだよ。」
「「うっしっし〜。ジョークだよ。そっかそっか。で、何処行くの?」」
「良くわからんが、温泉だとさ。」
それを聞いてトロが腕組みしている。
「どうしたトロ?」
ハオは不思議に思って聞いた。
「「ラグオルに温泉出たなんて聞いてないからさあ。」」
「待て待て待てwラグオルな訳ねえ・・・と思う。」
ハオは途中までは強く言ったが最後は自信が無かった。
(姉貴達の事だ・・・ありえない話じゃねえ・・・。)
「「まあ、パイオニア2の何処かのお宿だろうね。って聞いてるー。ハオー。」」
ちょっと動きの止まっているハオに呼びかけるトロ。
「あ、ああ。そう言う訳だからさ。」
「「オーラーイ。お土産期待してるよー。うっしっし〜。」」
「適当に買ってくるよ。」
「「イエーイ。んじゃねーい。アディオース!」」
そう言ってトロの方からビジフォンが切れた。
「本当に元気だよなあいつ。」
少し笑いながら呟いた。
(さてと、早めに準備しとくか。丁度暇だったし、いい暇潰しになるか。)
ハオは、早速自分の着替えを用意し始めた。


「姉さんはもう誘ったの?」
「勿論。シェイリーは?」
「何とかプレアさん口説き落としたよ。うふふ、楽しみ楽しみ。」
「これで、洞窟にいた時の人達にお礼出来るね。」
「うんうん。」
カルーネとシェイリーは嬉しそうに二人で話ながら外を歩いていた。無論この事実をチャオとハオは知る由も無かった。