宴の後

「痛っ・・・。」
ハオは頭痛で気がついた。
(確か・・・チャオに無理矢理酒飲まされて・・・。)
視覚がおぼろげだったが、はっきりしてきた。
「ん?赤い髪・・・。!!!フェリ」
そこまで自分で言って口を抑えた。
(な・・・何でフェリーが目の前にいるんだ!?)
ハオが驚いたのも無理は無い。目の前にフェリアーテが眠っているのである。しかも、同じベッドでである。
ハオは思わず自分の着衣を確かめた。
(・・・・・。俺、パンツしかはいてねえ・・・・。フェリーの奴何も着てねえ・・・。何も着てねえっ!?)
ハオは混乱して叫びそうになったが、自分の口を塞いで必死に堪えた。あまりに綺麗なフェリアーテの体に目が釘付けになっていた。
(こ、こんな事してる場合じゃねえ。服・・・俺の服何処だ?)
恥ずかしさを誤魔化す様に視線を外して部屋の中を見回したが、服らしいものは見当たらない。
(どうしたもんか・・・。)
ハオは今の状況に何でなったのかを考え始めた。

「う・・・・ん・・・・・。」
(や、やべえ!起きちまう・・・。)
ハオは焦ってその場でワタワタしていた。
「ん・・・あ、おはようハオ。」
少し寝ぼけ眼のフェリアーテは普通にハオに挨拶した。
「あ、ああ・・・おはよう。って待てw」
何気なく普通に挨拶し返したハオだったが今の状況を考えて突っ込まずにはいられなかった。
「どうしたんだい?」
フェリアーテは不思議そうに聞き返した。
「どうしたもこうしたもねえだろ!どうなってんだこの状況は。」
「その言い方だと覚えてないみたいだね。まあ、無理もないか。」
フェリアーテは少し苦笑いしながら言った。
「説明してくれるよな?」
「勿論さね。先に起きたのに、何もしなかったんだね。ふふっ。」
「ば、馬鹿いってんじゃねえよ。」
ハオは耳まで真っ赤になって、フェリアーテに背中を向けるように寝返った。
「昨日、チャオに無理矢理、酒入れられたのは覚えてるかい?」
「ああ、だがその後覚えてねえ・・・。」
ハオは正直に答えた。
「その後、気を失っちまって青い顔してるからまずいと思ってトイレで吐かせたんだよ。その時一回気がついてさ、帰るって言うもんだから見送ろうと思ったけど、全然立てる状態じゃなかったから仕方なく肩貸して歩いていったんだよ。」
「そうだったのか・・・。」
「それでさ、途中でまた吐いちまってさ、しかもあたいに力一杯かけてくれて・・・。」
「ぐわっ」
流石にハオは気まずくなってその場で俯いた。
「それだけで止まらないで、自分の服とかにも吐いちゃってね。どうしようもなかったんだよ。それで、一番近いここのホテルに無理言って入らせてもらったんだよ。ここしかないって言われたけど贅沢言えないから、とりあえず吐くの落ちついて睡眠に入ってたから、汚れている服だけ取って、寝かせたのさ。」
「そうか・・・悪かったな。」
ハオは申し訳なさそうに言った。
「仕方ないさね。ぐでんぐでんになっているハオは攻められないさね。それで、ハオの汚れた服とあたいの服を洗って、ついでにあたいはお風呂に入った。それがまずかったかな、一気に疲れとか来ちまって我慢出来ずに寝ちまったって訳さ。ベッド1個しかないのは気にする事も出来なかったよ。」
最後の部分でフェリアーテは苦笑いした。
「悪い・・・。気使ってくれてたのに、俺勘違いして・・・。」
ハオはフェリアーテが自分が酔ったのを利用して連れ込んだんじゃないかと思った自分を恥ずかしく思った。それと同時に、申し訳無い気持ちになっていた。
「あたい、ハオの事は分かっているつもりさね。短い付き合いじゃないし、こんな事をさ意図的にやったって嫌がるだけなのは分かってるよ。正直言えば、連れて来て欲しいとか思うけどね。」
「そうだったら、とっくに相手してねえな・・・。俺が連れてくるって?待てw」
途中まで言いかけて、フェリアーテの本音が出た所で突っ込んだ。
「ハオ・・・。あたいは・・・。」
フェリアーテの両腕がハオの首に回る。そして、背中に胸が当たる。
「待て待て待てっ!!!」
ハオは流石に焦ってジタバタした。
「この位の役得があったっていいさね・・・。」
「う・・・。」
ハオはそう言われるとじたばたするのを止めた。フェリアーテの胸越しに鼓動が伝わってくる。ハオの方もドキドキしていた。少しの時間がそのまま流れていた。

「なあ、フェリー。」
「ん?」
「何で俺なんだ?俺みたいなガキ相手にしてもつまらないだろ?」
ハオはおもむろに質問を投げかけた。
「ふふっ。つまらなくないよ。それに、ハオはガキなんかじゃないよ。自分でつまらない事言わないの。」
フェリアーテはそう言いながら、首に巻きつけていた片方の手でハオの頬を軽くつねった。」
「痛っ!」
「あたいが好きになった相手からそんな言葉聞きたくないよ。お仕置きさね。」
少し悪戯っぽい笑いが聞こえた後、ハオは首に違和感を覚えた。
「お、おいっ!?」
「チュ、チュ、チューーーー。」
フェリアーテは何回か首筋にキスをしてから、一箇所に吸い付く様にキスをした。そして、見事にキスマークが出来あがった。
「フェリー・・・何・・・した・・・。」
ハオは言わなかったが気持ち良かったのでちょっと聞く言葉もとびとびだった。
「ふふっ。吐かれた分の仕返しさね。」
フェリアーテは軽く笑って、首に絡めていた腕を解いて、密着させていた体も離して立ちあがった。
「もう、乾いているだろうからそこで待ってておくれ。見たかったらこっち見ても構わないさね。」
「見ねえよ!」
ハオはその場で頭から布団を被りながらいった。
少しして、目の前に服が置かれる音がした。
「フェリー、まさか裸じゃねえよな?」
「それは、期待してるって事?」
悪戯っぽくフェリアーテは言う。
「待てw何でそうなるんだ?」
「冗談さね。大丈夫だよ。早く着替えて帰った方が良いよ。親やお姉さん達も心配しているだろうからね。」
「姉貴達はどうでも良い。ただ、親には怒鳴られるかな。ったく、ついてねえ。」
ハオは布団から出てすぐに着替えながら言った。
「チャオにはちゃんとお仕置きしとくから勘弁してやって。」
「いや、迷惑かけたのは俺も同じだし。とりあえず出ようぜ。」
ハオは立ち上がってみた。ちょっとフラフラする感覚はあるが起きた時の頭痛は消えていた。
「よし、行くか。」
「あいよっ!」
二人は部屋を後にして廊下を歩いていた。途中で従業員らしき女性に会う。
「昨日はとんでもない状態で無理言って済まなかったね。」
「いえいえ、どうやら元気になられたみたいですし良かったです。また、何かございましたらご利用をお待ちしております。」
相手の女性は嫌な顔一つせず、笑顔でそう言ってお辞儀した。
(やっぱりフェリーの言う通り、俺酷かったんだな・・・。)
ハオは心の中で苦笑いしながら、軽くその従業員に会釈した。
二人はホテルから出て、背伸びした。
「じゃあ、また今度ね。」
「ああ、またな。」
ハオは軽く手を上げて、その場を後にした。
「まあ、あった事全部話せとは言われてないからね。後はあたいの胸の中に閉まっておくよ。ハオ・・・いつかは振り向かせて見せるよ。」
フェリアーテは少しだけ微笑んだ後、その場を後にした。