急展開

光に包まれてから暫く立って、転送された先は坑道ではなかった。
プレアはすぐに周囲を確認していた。横にいるシェイリーは気を失っているらしくぐったりしている。
「どうやら洞窟みたいやわぁ。しかし・・・さっきのは一体何だったんやろぉ?」
首を傾げながら呟いた。


そんな頃、フェリアーテ達は大乱戦になっていた。
「全く、何人いるんだい!」
フェリアーテはそう言いながら後から後から来る相手をインペリアルピックで応戦していた。
「この〜!」
声を出しているトロと無言で斧を振るうカルーネは、初めてとは思えない連携の良さを見せていた。その二人に当たらない様に慎重にセシールは撃っていた。
(流石に5人じゃ辛いか・・・。良くもった方かもしれない。)
ソニアは確実に相手を撃ちながら段々押されている状況を見て思っていた。


「おっ!ビジフォンが通じるわぁ。皆に連絡してみよぉ。」
プレアはまずチャオに連絡を入れた。
「「チャオ!ってプレアどうしたにゃ?」」
出たチャオの後ろにはいつもの見慣れたマンションの背景が見えた。
「チャオはん。今日はメビウスはんとフェリアーテはん何処行ったか分かりますぅ?」
「「めびぞ〜はビクとビーナと買い物行ったにゃ。フェリーは確かソニアと洞窟に行ってるはずだにゃ。それがどうかしたのかにゃ?」」
チャオは不思議そうに聞き返した。
「まあ、いろいろあってぇ。今お姉はんを探しているお人と一緒にいるんですわぁ。あ、せや、それとこれ見て何か分かったら教えてぇなぁ。ほな急ぐんでこれでぇ。」
プレアはビジフォンを一方的に切った。その後にさっきの映像データを送信しながら今度はフェリアーテにビジフォンをかけた。しかし、いくらかけても出る気配が無い。
「あらぁ?どないしたんやろぉ???」
プレアは不思議に思いながらも、今度はシェイリーを起こしにかかった。


「全く、いきなり切るにゃんて。にゅ?画像データかにゃ?」
チャオは一方的に切られたのに少し怒っていたが、送られてきている画像データを見ていた。
「こっ、こりはっ!!!」
チャオは血の流れている爪のマークを見た時に驚いた。
「ブラッディーネイル!?にゃんでプレアが関わってるにゃ?大変だにゃ!ここでのんびりしてる場合じゃないにゃ。」
すぐに身支度を整えてチャオはマンションを飛び出した。

「う、うん?」
揺すられてシェイリーは目を覚ました。
「あれ?プレア。そっか・・・光に包まれて気を失ったんだったっけ。」
そう言いながら周囲を見ていた。
「ここって、洞窟じゃない?どうして???」
「転送されたみたいやわぁ。多分お姉はんはここにいると思いますわぁ。早う行きまひょ。」
驚くシェイリーに軽く微笑みながらプレアは言って手を差し伸べた。シェイリーは手を取って立ちあがった。
(多分あれは・・・うちの分身だったのかもしれへん・・・。)
プレアは走りながら自分なりの答えを出していた。


(不味いな・・・。)
時間が経つに連れて劣勢が分かってきていたソニアは口元を歪めていた。
「シャーーーー!!!」
突然エネミーが叫んだ。トロはすぐにエネミーの声をした方を見たが見当たらない。
「しゃ!?」
トロが言うと、ひょっこりエネミーの頭が地面の上に出る。
(そうか!逃げ道作っててくれたんだ。ナイス!)
「皆、エネミーのいる所に向かって後退宜しくー!」
トロがそう叫ぶと全員がじりじりと戦いながら移動を開始する。
近付くとぽっかりと穴が開いていて、そこにエネミーがいた。最初にカルーネが飛び込み、前衛を勤めていたトロとフェリアーテが続いた。
「セシール先に行け!」
「で、でも。」
ソニアは無言で戸惑い迷っているセシールを問答無用で蹴り落とした。
「きゃああ!?」
セシールは頭から落ちたが、トロにナイスキャッチされた。
「乱暴だなあ。」
トロはちょっと苦笑いしながら言った。
「トロ、ハリセン貸しておくれ。」
「あいさ、姐さん。」
フェリアーテの言葉にトロは持っているハリセンを渡した。
「悪いけど、バランス崩して降りてくるソニアを上手く受けとめてやっておくれ。」
それだけ言うと返答も待たずに、フェリアーテは再び上に出た。凄まじい銃弾の嵐の中でソニアは傷つきながらも応戦していた。
「一人で時間稼ぎなんて流行らないよ。」
フェリアーテはハリセンを盾にしてソニアの前に立った。
「フェリーでなければ余計な真似をと言っている所だ。」
「酷い傷だよ・・・。一気に降りるよ。」
ソニアは無言で頷いた。二人で目配せをしてタイミングを取った後一気に穴に飛びこんだ。
「くっ!」
フェリアーテの予想通りソニアは受けた傷の痛みでバランスを崩していた。それを分かっていた三人は、見事に受け止めた。
「ナイスキャッチ!。ほら、トロ。サンキュー。」
フェリアーテはそう言ってトロの方にハリセンを投げた。
「ありゃあ、フォトンの跡がびっしり。とんでもない雨嵐だったんだねー。」
受け取ったハリセンをみて驚いた様に言った。
「ごめんなさい・・・。私がもたもたしていたから・・・。」
「謝るのは助かってからだ。トロ、エネミーに道案内を頼んでくれ。急がないと不味い。」
そんな話をしていると、エネミーが大きな岩を数個転がして来る。そして、入って来た場所に蓋をした。
「しゃーしゃー。」
「シャ!」
エネミーはいつの間に掘ったのか穴の中を先に歩き始めた。歩きながらソニアは自分の応急手当てをしていた。
「ソニア、右肘上げな。」
フェリアーテはそう言って、一人でやり難そうな所の応急処置をしていた。他の三人はその様子を見ていたが、とても自然で今までにも同じような事をして来ていたんだろうと容易に想像出来ていた。


「シェイリーはん、ちょい待ちやぁ。」
プレアからそう言われて、急ブレーキをかける。
「どうしたの?プレア?」
「地下に反応がある・・・。そんなに深うない。しかも、うちの知り合いやわぁ。」
「ええっ!?本当に?」
シェイリーだけでなくプレア自身も驚いていた。
「二人で出かけたはずなんに、人数ようさんおるわぁ。これは、追っていった方がええかもしれへん。この広い洞窟を探すのには多い方がええわぁ。」
「うん、そうだね。何処かで上にあがって来れそうな所とかで合流しよう。」
「はいなぁ。」
二人は、地下にいるフェリアーテ達と同じ地上ルートを歩き始めた。


「まずいにゃ・・・。元々洞窟で他の組織とも対立するくらい大きな所だにゃ。坑道で何をしていたかはわからにゃいけど、洞窟はブラッティーネイルのホームグラウンドだにゃ。巻き込まれる前になんとかしなきゃだにゃ。」
チャオは転送ゲートを目指して懸命に走っていた。