謎の場所
プレアとシェイリーはロボット達を連れて進んでいた。道は分岐する事無く、一本だった。暫く行くとプレアが異変に気がついた。
「シェイリーはん。ちょっと待ってえなぁ。」
「ん?」
呼び止められたシェイリーはピタッと止まった。今いるのは通路の途中だった。
「シェイリーはん、うちの後ろに隠れててえなぁ。」
そう言ってシェイリーが自分の後ろに行くのを確認してからプレアはAARを構えて先の壁を撃った。
ドカーーン!!!
大きな爆発が起きてかなりの爆風も来る。
「ええっ!?」
シェイリーは驚いて声を上げる。
「変な熱源反応があるさかい、おかしい思うてみたらやっぱりぃ。」
「流石っていうか、凄いね。変な熱源反応があるって分かっても、そう判断できる事が凄い!うんっ!」
「くすくす。」
シェイリーの大袈裟な反応にプレアは可笑しくなって笑った。
「そういうギャップがまた微妙だよねえ。」
シェイリーは感心した様に腕を組んで呟いた。
「でも、今のでうちらがいる事は向こうにしれてしまったわぁ。せやけど確認で出てくるかもしれへんから、壁に隠れてライフル構えて少し待ってみまひょ。シェイリーはん、ヴィクスー貸すさかい。」
「うん。ヴィクスーなんて持ったの初めてだー。うひょー。」
シェイリーは興奮して、ヴィクスーを受け取った。二人は両壁に別れて隠れて暫く待った。
「どうだ、死体はあるか?」
「いや、無い。」
プレアの読み通り、少しすると死体の確認をする為に二人の男が来ていた。さっきいたのとは違う二人だった。
プレアとシェイリーは目配せしてタイミングを計って、一緒に撃った。見事に二人の頭部に命中して二人は声を上げる間もなく倒れた。
シェイリーはプレアの方を向いて、親指を立ててウインクした。
(やっぱり、シェイリーはんかなりの腕やわぁ。少し武器に対しての愛着が強いみたいやけど、それだけや無うてそれに見合うだけの腕も持っとるわぁ。)
プレアの方は感心してシェイリーを見ていた。
もう暫くその場にいたが、相手が動く気配が無い。
「シェイリーはん、行くでぇ。」
「あいあいさー。」
シェイリーは軽く敬礼の真似をしてから歩き出した。
「あらぁ?」
プレアが途中で声を上げたのでシェイリーはピタッと止まって不思議そうにしていた。
「シェイリーはん、ここの壁抜けられそうですわぁ。」
「ええっ!?」
シェイリーが驚くのも無理は無い。どう見てもそこは普通の壁だし、そこから照明の光も漏れてる。
「ほらぁ。」
そう言いながらプレアは体を壁の方へ移動させる。体が壁に吸い込まれる様に消えていく。シェイリーが見ているのはあっという間に体半分が消えているプレアだった。シェイリーは目をぱちくりしながら驚いている。
「さあ、驚いてないでぇ、早うこっちにぃ。」
そう言ってプレアは一旦出てきてから、シェイリーの手を引っ張って壁の中へと入っていった。流石に驚いているシェイリーは壁が目の前に迫って来て恐くなり体を強張らせて目を閉じた。
プレアは、中に入ってからすぐに入口側を見た。
「やっぱり、さっきのショックで開いたんやわぁ。ここは向こう側の人間も分かって無いわぁ。」
目を閉じていたシェイリーはプレアの声を聞いて恐る恐る目を開けた。さっきまでの通路とは違い随分としっかりした作りになっている。
プレアの方は、ロボットを中に全部入れた後に、後ろのドアの壊れた制御盤に腕を突っ込んで、すぐにドアを閉じた。坑道に来てからこんなに分厚い扉はなかった。向こう側からゆうに5mはある。
(ここに入ったんわぁ、もしかすると助かったというよりはあかんのかもしれへん・・・。)
プレアは厳しい表情になって通路の先を見つめていた。シェイリーはプレアの雰囲気に気が付いて唾を飲み込んだ。
「シェイリーはん、こっから先うちやロボット達に何かあったとしてもぉ、無視して先に行ってえなぁ。人やったらひっかからんかもしれへんさかい・・・。」
「え・・・、あ・・・う、うん。」
静かに言う言葉と裏腹に迫力のある雰囲気に思わず、頷いてしまった。
「ええかぁ、これから先はうちはええさかい、シェイリーはんを守るんや。シェイリーはんが大丈夫やったらぁ、自分優先や、ええなぁ。」
プレアの言葉にそれぞれのロボットが反応を示した。
(プレアって・・・不思議・・・。)
シェイリーはプレアの言動に何か言葉では言えない引きつけられるものを感じていた。
暫く歩いていると、大きな扉があった。今までに無い高さ20m、幅40mはあろうかというものである。
「うひゃー、大きいねえ。」
「コンソールや、パネル、制御盤があらへん・・・。」
「どうやって開けるんだろう?」
不思議がっているシェイリーの横で、恐いくらいに厳しい表情をしているプレアがいた。
(多分・・・うちと同じような性能を持ったものにしかアクセスすら出来へん・・・。)
プレアは自分の腕を見ながら、考えていた。
(アクセスしても、逆にこっちが乗っ取られる可能性がある訳やぁ・・・。)
「シェイリーはん。」
「うん?い、いえっはいっ!何でしょうプレアさん。」
呼ばれたシェイリーは気楽な顔をしていつも通りに振り向いて答えようとしたが、プレアが余りにも真剣な表情をしているので、つられて真面目な口調になっていた。
「うちが誤動作したらぁ、迷わず撃って下さいなぁ。」
「ええええ!?」
「多分ここを開ける最初の段階にはうちは入り込めると思うんやけどぉ、正直その後どうなるかわからへん。そのくらいここは危険言うか、来たらあかん所なのかもしれへん・・・。」
「・・・・。」
プレアの言葉に流石のシェイリーも黙り込む。
(あれだけ凄いプレアがここまで言うって事は相当なんだな・・・。引き返さないって言わないって事は、あいつらにここの存在を知られたくないんだよね。)
プレアは武装を全て解いてドアの前に立った。
「ええね。ほな、行くでぇ。」
複雑な顔をしながらシェイリーはプレアに武器を向け構えてから頷いた。
プレアは腕をドアに押し込んだ。
「「何者です・・・。」」
プレアの中に言葉が入ってきた。
「うちはプレア。一人の人間を助けたくてここに迷い込んだロボットですわぁ。」
「「私にアクセス出来る能力を持っている上に、かなりのスペックを有していますね。貴方のような優秀なロボットに会うのは初めてです。人間を助けたいと言いましたね。」」
(PULA・・・余計な事してぇ。)
プレアのデータの一部を相手に流したのを分かってはいたが、止めなかった。
「お姉はんとはぐれてしもうてぇ、再会させたい思うてるんやわぁ。」
「「良いでしょう。近くまで送って差し上げましょう。そこから先は貴方とその人間の二体で行くのです。」」
「ほんまにぃ?そういう事やったらぁ、お願いしますわぁ。」
「「では、行きますよ。」」
「あ、あんさんの名前を教えてんかぁ。」
プレアは自分が転送されるのが分かっていたが、最後にそれだけを聞いた。
「「私は貴方の一部・・・。この場所は貴方にしか来れない場所だった・・・。そして、貴方にしか開けない扉を開けたのです。古のアルゴルの遺産プレア・・・・・・」」
「な、なんやてぇ!?」
ピクリとも動かないプレアが突然声を上げたのでびっくりしてシェイリーはヴィクスーの引き金を引いたが反応しない。
「おろ?」
驚いてヴィクスーを見ていると、前からまばゆい光に包まれる。
「どうなってるのー!?」
シェイリーの叫び声を最後にそこには何も無くなった。そう、そこには何も無かったかのように・・・。