少し見えた影

(個体数3、熱源反応から生物3、女性型1、男性型2。)
プレアは外から入ってくる複数の個体の入口から一番近い所に浮いているカナバインから情報を収集していた。
「どうやら、誰か来たようだな。部屋の電源スイッチのランプが見えなくなっている。」
「随分とメカが減ってるな・・・。凄腕かもしれん。」
男の二人の会話を拾っていた。
(何者なんやぁ?)
プレアはその場で考えながら、三人のデータを引き続き詳しく集めていた。
「わざわざ、暗視ゴーグルとか持ってくるか?洞窟なら考えられるか・・・。死体が残ってないか調べないとね。それと、この機械でまたここに適当にロボット置いておかないとね。」
女は冷静な声で言った。
「そうだな、まずは明りをつけるか。」
そう言うと、三人が照明装置の目の前にいるプレアの方に歩いてくる。
(あ、あかん。どないしよぉ。)

中がそんな事になっていようとはつゆ知らず、シェイリーは座っていた。撃つのを諦めて、ヤスミノコフを観察していた。
「良く出来てるなあ・・・。マニアじゃないんだけど、欲しいなあ。プレアさんにお願いしたら譲ってくれるかなあ。」
そう呟きながら天井を見上げた。
「ん?あれれ?」
上を見ておかしな声を上げたシェイリーを見て周りのロボット達も天上を見上げる。何かまでは確認出来ないが、小さく微かだが赤く光っている。カナバインが近付こうとしたが、シェイリーがそれを制した。
「近付いて、何か出ても不味いからね。ここは私に任せて!」
そう言って赤い光に向かってヤスミノコフを構える。レーザーサイトは途中で途切れてしまっているが、膝を突いてしっかりと構える。

バシュッ!
パリーン!!!

シェイリーが放った一発は見事に赤い光に命中。割れたような音がした。
「やっりー!」
その場でガッツポーズをして、ロボット達に親指を立てて得意げにしていた。

ビービービー!!!

「へっ!?」
急に辺りに警告音のようなものが鳴り響いて、周りの照明もオレンジ色になり点滅し出す。
「やっちゃったのかな?」
シェイリーは舌を出して呟いた。

警告音は真っ暗な部屋にも鳴り響いた。
「センサーが破壊されたのか!?」
「やっぱり凄腕が迷いこんだな・・・。」
男の二人は真剣な感じで言っている。
「迷っているんじゃなくてからくりに気が付いた連中かもしれないね・・・。」
(どうやら、後ろめたい事やってる連中みたいやねぇ。でも、これでシェイリーはんの方にいかれても困るなぁ・・・。)
プレアは今後の対策を考えていた。
「センサーのある場所だって、なかなかわからないし、対カナバインと天井に張りついているシノワ用で、近付くと電磁波が出る仕組みらしいじゃないか。しかも、かなりの小ささで、まず当たらないっていってたぞ。」
「それは、俺も聞いた。一人出来てるかもわからんしな。でなきゃ、ここを突っ切れる訳が無い。」
「あえて、先に行かないで戻って待ち伏せる方が良い。部が悪い。戻った方が良いとあたしは思うがどうだ?」
「そうだな、この先行っても行き止まりだしな。ドアはあっても開きはしない。」
「よし、戻って待ち伏せだ。それと、一人応援を呼ぶ事にしよう。」
三人は話がまとまったらしく、すぐに来た道を引き返すべく部屋から出ていった。
(ふぅ。片付け損なったのを悔いるべきなんか、シェイリーはんと分断されなくて良かったのを喜ぶべきなんか、微妙やなぁ。)
プレアは苦笑いしながら立ちあがった。そして、シェイリーを迎えに行くべく部屋を後にした。

しばらくすると警報音は止み、照明も元に戻っていた。
「何だったんだろ?」
シェイリーは首を傾げながら周りをキョロキョロと見ていた。
「お待ちどうはん。」
「うわわわあ。」
突然後ろから声を掛けられたので思わずヤスミノコフを構えた。目の前にはニッコリ笑ったプレアが立っていた。
「脅かしてしもて堪忍なぁ。」
「ううん。びっくりしただけだから大丈夫。プレアさん足音立てないで歩けるんだね。」
シェイリーは感心した様に言った。
「はぁ?うち、消音モードにしていまへんよぉ。」
「ありゃりゃ?」
「くすくす。」
シェイリーの反応に少し笑いながらプレアは天井を見上げた。確かに小さなセンサーらしいのが割れているのが分かった。
「あのセンサー撃って壊したのシェイリーはんでっかぁ?」
「うん、何か怪しかったんだよね。カナバイン君が行こうとしたんだけど止めて、これで一発だよ。流石はヤスミだよねえ。反動はあるけど、そこらへんの無反動のフォトン使ったハンドガンみたいにぶれ少ないし。」
(ちゅうかぁ、シェイリーはん目も良ければ、銃の知識、腕かなりのもんやったんやなぁ。)
プレアは感心しながら、目線を天上からシェイリーに変えていた。
「それで、どうだった?」
「それがやねぇ・・・。」
プレアは少し苦笑いしながら、あった事を映像を流しながら説明し始めた。
「うむむ?あれれ?」
「うん?どないしはったん?」
映像を真剣な目で見ているシェイリーは途中で素っ頓狂な声を上げた。
「えっとね、今のさ男の人の背中をスローで流して貰って良いかな。」
「はいなぁ。」
プレアは映像を戻してから一人の男の背中が映っている部分をスローモーションで再製した。
「ストップ!ここ拡大できる?」
シェイリーが指差す所を無言で拡大すると、何かのマークのようなものが映っている。手があって、その人差し指の爪から血が落ちているようなものだった。
「えっとねえ、これ見た事あるんだよねえ・・・。何だったッけなあ・・・確かねえ・・・ブランデーじゃなくって・・・、あー、もー思い出せないよー!」
そう言ってシェイリーは自分の髪の毛をかきむしった。
「まあまあ、とりあえず先に行かなあかんさかいなぁ。罠とわかってるさかい、誰か呼びたいのは知り合いを呼びたいんはやまやまなんやけどぉ。ジャミングで連絡とれまへんのやわぁ。戻るのも一つの手なんやけどぉ、シェイリーはんのお姉はんの事考えるとぉ、先に進まなあかんやろからなぁ。」
「じゃあ、こうしよう。行くだけ行ってみて無理なら大回りになるけど戻ってから、捜し直そう。そいつ等に変に関わるのもなんだし、生きて再会したいしね。」
シェイリーは困った顔をして言うプレアに提案した。
「そう言って貰えるんやったら、楽になりましたわぁ。ほなら、とりあえず行ってみまひょ。」
「そうだね。」
そして、通路を通れるだけのロボットを引き連れてプレアとシェイリーは一旦暗い部屋に入って、通路を通れるだけのロボットを前後に挟むようにして罠の待っているであろう一本道を歩き始めた。