地底湖を目指して

「あ、あの・・・。大丈夫なんでしょうか?」
セシールはトロの後ろから恐る恐るエネミーを見ていた。
「うん?大丈夫、大丈夫。普通に話を聞いてるだけだから。」
トロの目の前には、トロやセシールの倍ぐらいある大きさのエネミーが3体いて、それと話をしていたのだった。トロの方は新しい情報を集めに洞窟に来ていた。本当ならば一人で来るつもりだったのだが、パイオニア2で洞窟に来る途中でセシールと会ったので、どうせだからと一緒に来ていたのである。
話が終るとエネミーの方が軽く手を振って去っていった。トロの方も軽く手を振っていた。その様子を見てセシールは目をぱちくりしていた。
「とりあえずね。最近の変わった話っていうと、地底湖の話と機械の場所に転送されるゲートが見つかったらしいってとこみたい。」
「機械の場所ですか?坑道ですかね?」
セシールは不思議そうに聞いた。
「うーん、どうかなあ?エネミー君達はそういうのは分からないだろうからねえ。多分話が通じるハンターから聞いたんじゃないのかなあ。でも、坑道の可能性が高いかもね。まあ、ここと繋がってってもおかしくは無いと思うけどね。ここも、坑道も全ての場所が分かってる訳じゃないからそういう転送ゲートがどこかにあってもおかしくないよねえ。」
「そうですね。あちこちに転送ゲートがありますけれど、坑道以外にも繋がっている所もあるのかもしれませんね。でも、正直に申し上げますと転送ゲートより地底湖の方が興味沸いています。」
セシールは目を輝かせて言った。
「うっしっし〜。セシールはお水大好きだもんね。案外、ある場所とかセシールならすぐ分かるかもしれないね。よしっ!転送ゲートはあったらあったで良いとして、今日は地底湖探しに行ってみよう。」
トロはそう言いながら右腕を高々と上げた。
「はいっ!」
セシールは嬉しそうに微笑みながら返事をした。
「とは言うものの、どうやって探したものやら。」
トロは腕を組みながら首を傾げた。
「私に任せてみて貰えますか?水の反応はあちこちにありますが、量が多かったり、質の違う水があれば分かりますから。」
「よし、じゃあ任せちゃおう。セシールは探すのに集中してもらってあたしは周りを警戒しておくからさ。」
セシールは頷いた後、目をつぶってゆっくり歩き出した。トロはセシールの後ろで武器を構えながらついていった。

随分と奥の方まで二人は来ていた。途中で結構エネミーと出会ったが、殆どは戦わずしてトロが話をして解決していた。中には仕方なく戦った相手もいたが、途中からエネミー達が助けてくれたりもした。セシールは改めてトロの凄さに感心していた。
「トロさん凄いですね。」
「なーに、なーに、これも講座のおかげ。それにさ無駄に争うのって馬鹿みたいだし、もともとここはエネミー達の住処だからね。郷に入れば郷に従えって言うじゃない。結構話せば分かってくれるエネミー多いしね。結構向こうがビックリする時もあるけどね。反応を見ているだけでも楽しいよ。うっしっし〜。」
トロの言葉をセシールは微笑みながら聞いていた。そして、二人は更に奥へと進んでいった。
暫くして滝のある部屋に入った。
「へえ、綺麗な滝だねえ。」
トロは滝を見上げながら呟いた。結構な水しぶきが立っていたが気にせずに見ていた。トロは滝壷からちょっと離れた場所で水の感触を確かめた。
「冷たっ!結構冷たいんだなあ。流石にこの冷たさじゃあ万が一泳ぐ事になったら辛そうだなあ。」
トロは水から手を上げて再び滝を見ていた。
「トロさん。地底湖が近いかもしれません。」
「おおっ!?」
突然のセシールの言葉にトロは驚いた。
「この滝や、周りにある水とは質の違うもので凄く大量に感じるんです。既にこの地下一面に広がっているかもしれません。入口になる場所が近いので感じれるんだと思います。」
「よーし、後少しだね。楽しみ楽しみ。」
トロとセシールは、奥の部屋に入った。さっきまでは水が多くあったのにこの部屋には全くといって良いほど、水が見当たらない。
「あれれ?隣なのに全然水が無いね。何でだろ?」
トロは不思議そうに呟いた。
「トロさん気をつけて下さいね。ずっと下の方から水の気配を感じます。多分あちこちに落とし穴のように下に向かって穴が空いているんだと思います。予想だとその下に地底湖が広がっているのかなと。草むらとか岩陰なんかに穴が開いてそうで危ないと思います。」
「うげげっ。流石に大人しくしてようっと。あたしにはさっぱり分からないしねえ。もしかして既に落ちている人達結構いたりして?遺留品とかあるかも・・・。」
トロはセシールの言葉に驚いて、その場で立ち止まって周りをキョロキョロ見ていた。
「どうしましょうか?落ちてみますか?」
「ええっ!?落ちてみますかって言われても困っちゃうなあ。下は水なのかな?それだったら着水できるから良いけど、陸地だったら大怪我しちゃうよ。」
トロは何とも言えない顔をして言った。
「水の反応の強い所なら大丈夫だと思います。」
「うーむ、どうしたものかなあ。」
二人がそんな話をしていると、突然奥の方から一人の女性が現れて歩いてきた。
「私、妹とはぐれちゃって・・・。」
その女性は分かっていないのか、危険そうな部分を通ってくる。
「危ない!ストップ、ストーーーップ!!!」
「ん?何て言ってるのー?」
トロは叫んだが、女性は聞こえないらしく耳に手を当ててそのまま歩いてくる。
そして、女性は草むらの上に乗った瞬間、
「あら?」
という言葉を残して姿を消した。
「あーーーーーー!!!」
トロは叫んだ。トロは駆け出そうとしたが、セシールが必死に止める。
「トロさん駄目ですよ。あそこに行くまでに他の所に落ちちゃうかもしれません。」
セシールの言葉にピタッと止まるトロ。
「じゃあ、どうしたら良いの?あの人見殺しに出来ないよ。えーい、こうなったら落ちたら落ちただ。あたしは行くからねえ。」
「仕方ありません。私が上手く穴を避けるように誘導します。バランス崩さないで下さいね。」
トロは駆け出して、セシールは水の反応が下からする場所をなるべく避けるように、後ろからトロの走る軌道を修正して、女性が落ちていった草むらの所まで来た。
「それじゃあ、行くよ。」
トロの言葉にセシールは頷いた後、唾を飲み込んだ。
そして、二人は意を決してそこに飛び込んだ。
「とりゃあ。って、どわわぁーーー。」
「キャーーー。」
二人が落ちた穴は真っ直ぐではなく、複雑な形をしていた為に、体のあちこちをぶつけながら上も下も分からない状態になって転げ落ちていった。