謎の女性

プレアは坑道にいた。以前にフェリアーテを助けたような、普通では行けないような場所が無いか探索に来ていた。
「うーん。ありそうで無いもんやなぁ。」
プレアは呟きながら、自分で作ったマップを見ていた。既にかなりの場所がマッピングされていた。自分だけでなく、他のメンバーからも情報収集してそれを参照にしていたからである。どこまで広がり続けるか分からないマップを根気良く埋めていっていた。
「でも、未だにあの場所は開けられた形跡が無い所を見ると、他にあっても良いもんやけどなぁ。」
ちょっと首を傾げてから武器を構え直して再び歩き出した。他の場所では、誰かと一緒にいないと厳しいが、ここではプレアは無敵を誇っていた。まともに戦う事無く相手を支配化におけるからである。長く坑道に通っている事もあり動きの速いシノワ系にも簡単に対応できるようになっていた。初めて来ていた頃の苦戦が嘘の様である。それだけ、プレアのソフト能力が凄まじい事を物語っている証だった。今も右隣にはシノワレッド、左側にはギルチッチ、上に数機カナバインを伴っていた。
時々通り過ぎるハンター達は一瞬身構えたり、驚きの顔で見送っていた。一部のハンター達にはプレアは良く知られていた。実際に危ない所を助けられているハンターも多かった。
ただ、プレアの方は今の状況に違和感は無く当たり前のように坑道を進んでいた。

「キャー!誰か助けて!」
微かだったがプレアは悲鳴を聞き取った。声のした方向のマップを見てみると、まだ行った事の無い場所だった。プレアは無言で駆け出した。シノワレッドを先行させて様子を見に行かせると、ロックのかかったドアがある。
「あかん、うちやないと開けられへんわぁ。」
プレアはドアの所まで来て、他の全機にドアが開いたら一気に突入させる形にして腕をめり込ませてロックを外しにかかった。
「「このドアはロックされています。暗証番号を提示して下さい。」」
プレアは一瞬で暗証番号を返した。
「「暗証番号確認、ドアオープンします。」」
「皆、突入やわぁ!」
プレアの一声で、シノワレッドを先頭に中に突入していった。プレアも後に続いた。
中では、一人の女性のハンターがシノワゴールドに襲われていた。まず、シノワレッドが切られそうになっている女性まで一気に近付き抱きかかえて離脱。その後にカナバインが一斉に上空から放電攻撃。シノワゴールドは感電して動けなくなった。
「????」
助けられた女性は驚いて目をぱちくりながら、恐る恐るシノワレッドを見上げていた。
プレアは感電しているシノワゴールドに近付き頭部に腕をめり込ませた。プレアにも電気が流れてきたが、気にせずにそのままの状態で暫く時間がたった。
女性はいつも敵であるシノワレッドや、カナバインがプレアに従っているのを見て不思議に思っていた。
(私はシノワゴールドに襲われてシノワレッドとカナバインに助けられた???どういう事???)
感電が解けたシノワゴールドが動き始めた。
「危ない!」
流石に女性は焦って叫んだ。
「大丈夫やわぁ。」
プレアは女性の方を向かずにその場でそう言った。プレアの言葉通り、シノワゴールドはプレアの前にひざまずいた。
「えええっ!?!?」
(さっきまで襲っていたシノワゴールドが、ひざまずいてる!?ま、まさか・・・。この青いロボットって・・・ボス!?だとしたら私はどうなるの?連れていかれて人体改造とかされちゃうのかしら。)
驚いた後に、女性は勝手な思い込みで青くなって震えていた。
「もう大丈夫やわぁ。レッド、離してあげぇなぁ。」
プレアがそういうとシノワレッドは女性を放してプレアの横に素早く移動して控えの姿勢をとった。
女性は訝しげな目でプレアを見ている。
(このロボット・・・。その辺にいるのと作りが違う・・・。)
「私をどうするつもりなの!」
女性は耐えられなくなりプレアに怒鳴る様に言った。
「どうする言われてもぉ。もう助かったさかい別に何もするつもり無いけどぉ?まあ、道に迷ってるならぁ、道案内してもええけどぉ?」
(このお人は何を怯えているんやろぉ?それに何で怒鳴るんやろぉ?)
プレアは女性の反応を不思議に思いながら答えた。
女性の方はプレアの言葉に毒気を抜かれてポカンとしていた。
「なんや驚いている所悪いんやけどぉ、一人やったんかぁ?誰かとパーティー組んでおらへんかったんかぁ?」
女性の方はそう言われて、ハッとなった。
「実は、私、姉さんと一緒に洞窟にいて・・・。気が付いたらはぐれた上にどういう訳か坑道にいて、目の前でシノワゴールドに襲われて逃げ回っていたの。」
「そら、大変やわぁ。ここと洞窟がどこかで繋がっとるいう事やしぃ、あんさんのお姉はんがもしかしたらぁ、洞窟であんさんの事を探しているかもしれへんなぁ。しかも、一人やったらぁ、エネミーに襲われているかもしれへんわぁ。」
女性はプレアの言葉に再度青くなった。
「こんな所でぇ、ゆっくりしている場合ちゃいますわぁ。うちも力貸しますさかい、はよう行きまひょ。」
プレアの言葉に女性は頷いた。
「さっきの話やとぉ、逃げるのに必死で道が分からんやろからぁ、一緒に探しながら行きまひょ。皆も力貸してなぁ。ほな、行きまっせぇ。」
プレアは女性の手を引いて走り出した。女性も手を引かれるままに走り出した。
(さっきまでは悪いロボットのボスかと思ったけど、全然良いロボットだったんだなあ。)
そんな風に思いながら、既に周りの状況に慣れていた。
「そういえば、名前言ってなかったね。私はシェイリー。姉さんの名前はカルーネ。」
「うちは、プレア言いますぅ。少しの間かもしれへんけど宜しゅうにぃ。」
二人は走りながら自己紹介して微笑みあった。