「マザーブレイン破壊プロジェクト」始動

プロジェクトは開始されたが、初めから意見の衝突が後を絶たなかった。
人を雇い破壊する、コンピューターウイルスで破壊するなどの案が多く出ていた。
(まあ、予想通りよね。)
プリーはそんな騒動の中、黙して語らず、涼しげな表情で成り行きを見守っていた。
そして、それだけで一ヶ月が過ぎようとしていた。
「このプロジェクトを最初に立案されたプリー博士のご意見は如何なんでしょう。」
衝突してまとまっていなかった周囲と、焦れた人間達から自然に声が上がった。
(ようやく私に目が向いてくれたわね。)
プリーは俯いて少しにんまりしてから、キッとした表情になって顔を上げ立ち上がった。
「皆さんの意見は全て聞かせて頂きました。皆、良い案だと思います。しかし、ここに集まって頂いた皆様が五年かけて何をするかと考えてみて下さい。傭兵を雇うお金を稼ぐ為ですか?その傭兵に匹敵する人材を探し育てる事ですか?途中で人的、もしくはコンピューターの遮断に合う可能性の高いウイルスを作る事ですか?」
ここであえて言葉を区切り皆に考える時間を与えた。皆はざわつき、それはすぐに只のざわつきから騒がしい論争に変わっていった。
(これだけ言って出る答えが前と同じなら、その人間はこのプロジェクトから外れてもらうしかないわね。私とストラの見込み違いだったって事になっちゃうわね。)
プリーはそんな周りを見渡しながら、少し眉をしかめて苦笑いしながら考えていた。
「皆様宜しいでしょうか?」
そして、そのざわつきが一段と強くなったと思われた時、プリーは大きな声で言った。
「私は今から五年前にロボット工学の学会から島流しにあいました。その時は絶望しました。しかし、環境システムに触れる事で違う発見や経験も多々しました。そんな中で、いろいろな変化が起こっています。それと、きっとここにいらっしゃる中にも未だに私の説を信じていらっしゃらない方もいると思います。ただ、これだけは言い切れます。ここにいる私を含めて全員は、この星の行く末を心配していると言う事です。ただ、この問題はこの星だけでなく、アルゴル太陽系の未来がかかっているのです。」
ここで、もう一度間を置いて水を飲む。再び、周りはざわつき始める。
「私自身も含め、皆様には一体の究極のロボットを作って頂きたいのです。マザーブレインに支配されないソフトを持ち、マザーブレイン本体だけでなく、それをガードしているロボットにも負けないハードを持つものを!」
このプリーの一言は周囲を一気にどよめかせた。
「何故一体何ですか?ガード用のロボットは必要ないんですか?」
当然の質問だった。周りの数人も頷いていた。
「ガード用のロボットは、最後にはマザーブレインの支配下に置かれる可能性があります。もしそうならなくても、マザーブレインとそのロボットの間での支配化の奪い合いに暴走や壊れる可能性が高いです。そのガード用のロボット分の機材などを一体に集約した、より良い一体を作り上げた方が方が良いと思います。」
プリーはあっさりと答えた。相手は納得したらしく黙って頷いた。
「しかしだな、今、現在マザーブレインに支配されないソフトは存在しない。そんなものをどうするんだ?」
これも最もな意見だった。この意見にも先程とは違う人達が頷いた。
「今やこの星の中枢を支配しているマザーブレインですが、既に数百年前に導入された古いコンピューターなのです。この数百年という長期間によるデータの蓄積は凄まじいものがあると思います。しかし、ここには今現在の最新のソフトの知識と技術があります。そして、これから五年と言う時間があります。私はソフトについては詳しい方ではありませんが、ここにいらっしゃるソフトのエキスパートの方々のお力があればマザーブレインと同等以上のソフトを作成出来ると確信しています。」
プリーは真剣にソフトチームの方を見て言い切った。ソフトチームの一部の人間は難しそうな顔をしたが、逆に一部では頷いている人間もいた。次の質問にと手を上げた人間を制してプリーは言った。
「ハードに関しても同じです。私も昔はロボット工学の権威と言われていましたが若輩者です。集まって頂いた皆様の力があれば、究極のマザーブレイン破壊用ロボットは完成させる事が出来ると信じています。その為に下らない権威やお金に縛られず、信念とその知識や腕を見込んで各人にお願いに上がりました。一人一人がバラバラなら出来ないかもしれません。でも、ここにいる皆様が協力して下されば、このプロジェクトは必ず成功します。私の我侭と思って下さっても結構です。何を馬鹿な夢を見ているんだと言って下さっても構いません。私は、この星を、いいえ、このアルゴル太陽系を救いたい。皆様今一度お願い致します。皆様のお力が今必要なのです。どうか、どうか皆様のお力をお貸し下さい。」
プリーはその場で土下座をした。周囲の視線はプリー一点に集まった。
「なあ、お前さん等。わしは、元々パルマにおったんじゃが、ここにこんな人がいるとは思わなんだ。自分の権威にしがみつく下らん輩とは違うし、自らの周りだけ良ければ良いという輩とも違う。今や行き来できなくなった他の星の事も考えておったとはな・・・。そうそうできん事じゃわい。わしはプリー博士に力を貸すぞ。周りにいるお前さん等も意地を張るのはかまわんが、本当の自分の力を試せる一生に一度の機会をみすみす見逃すのか?」
初めにプリーに近付いて言ったこの男はかつてパルマでその名を轟かした、ヴァイリス博士だった。博士の意見にかなりの人数がやる気を見せた。
「ちょっと待つズラ。もし、プロジェクトが成功したとして、環境に変化が起こるのは間違いないズラ。その後はどうするズラ?」
デゾリアンの独特の訛りで聞くものが一人いた。
「環境の変化は凄まじいものになるでしょうね。しかし、今のままモンスターが増えメカが暴走した時には果たしてそれを止める事が今の人間達には出来ない。そうなれば、モンスターとメカだけが残る世界になるかもしれないわね。いえ、モンスターがマザーブレインの意志で生まれたのなら、駆除されてメカだけの世界になるかもしれない。そこをどう説明をつけます?プリー教授。」
また違う話し方は綺麗だが毛むくじゃらのモタビアンの一人が聞く。
「マザーブレインの異変にもモンスターの事にも、いずれ人々は気が付くことになるでしょう。そして、人間の中でもマザーブレインをどうにかしなければならないと思うものが動き出すでしょう。人間は順応性に優れていますからね。これから作ろうとしているロボットは一体でもマザーブレインもモンスター達も倒せる能力が必要です。ただ、何事も計算だけでは片付けられません。そのロボットが同じ意志をもつ人間達と共に戦えればとも思っています。そして、最終的にマザーブレインを破壊した後には、今の宇宙船禁止命令も関係なくなるでしょう。皆様や、他の方々に御意志があればそれぞれの星に渡って頂き復興に御尽力して頂ければと思っております。他の星がどうなるかは予想でしか出来ませんが、大変な事になるのは間違いないでしょう。その為に、ここでは、宇宙船とそれに積める簡単な環境システムも外部には極秘に作ろうと考えています。私もただ、破壊するだけでなく後の事も考えています。ここ数年で環境システムに関わったお陰です。環境の変化等については追って皆様にご説明と共にデータを見て頂きたいと思っております。」
プリーは頭を上げて皆に説明した。
「それなら話は早いズラ。デゾリスに戻れると考えればこの知識と腕を貸すなんて安いものだズラ。私もプリー博士に協力するズラ。」
その一人のデゾリアンがそう言うと次々にデゾリアン達から賛同の声が上がった。
「豊かになって昔の砂漠の時代を忘れてしまった私達に与えられる試練なのかもしれない。良いでしょう。私も協力しますよ。」
そのモタビアンも賛同の意志を示すと、多くのモタビアンがやはり賛同した。
そして、三人がプリーの手を取って立ち上がらせる。
「この世界を救う為に!この世界の未来の為に!」
四人は手を取り合って掲げた。
(私とストラの見る目は間違っていなかった。いいえ、何よりこれだけの素晴らしい人達に巡り合えて良かった。何としてもこのプロジェクト成功させて見せる!)
プリーの瞳は嬉し涙とやる気に満ちていた。

集められた人達はそれぞれチーム編成された。ロボットハード製作チーム・ロボットソフト製作チーム・宇宙船製作チーム・環境システム製作チームの大きな四つのチームに分けられた。
そして、「マザーブレイン破壊プロジェクト」が本格的に始動し始めたのだった。