ウォーターランドへゴー(中編)

「二人共お待たせだにゃ〜。」
チャオの声でメビウスとハオは振り向いた。

ヴィクスンは白いビキニ。
フェリアーテは赤いスポーツタイプのビキニ。
トロとセシールは白と水色の斜めのワンピース。
チャオは胸の部分にNYANと入っていて、肩に猫のワンポイントが入っているワンピース。
和夜は青い模様入りの白いワンピース。
テムは、白にピンクのボンボンが水玉模様みたいに入っているワンピース。
ヴィーナは薄いピンクで少しフリフリがついているワンピース。

「よっしゃ、んじゃ俺とヴィクとヴィーナは子供用プール行くから、そっちはそっちで宜しくな。男はお前だけだが、頑張れよハオ。」
「おい・・・。」
ハオは言われて変に意識してしまっていた。
しかし、そんなハオを気にもせず、メビウスはヴィーナを抱き上げてヴィクスンと一緒に離れて行ってしまった。
「ハオ、親子水入らずを邪魔しちゃ駄目だにゃ。さあ、こっちはこっちで楽しむにゃ〜。」
チャオはビーチボールを持って楽しそうに言った。
「うっしっし〜。ハーレム、ハーレム。」
「まてw」
ニヤニヤしながら言うトロにすかさず突っ込みを入れるハオ。ハーレムと言う言葉に妙に反応して恥ずかしそうにしているセシール。
(やっぱり、何だかんだ言ってもチャオ胸大きいのじゃ・・・。わらわはヴィーナとテム寄り・・・なのじゃ・・・。)
和夜は自分の胸を見ながら溜息をついた。
「はやくいきましょ〜♪」
テムは浮き輪を持ちながら皆を促した。
「こんな所で立っていても仕方ないしね。ねえ、ハオ。」
「な、なんだ?」
一瞬フェリアーテの方を見たハオだったが、急に恥ずかしくなって目を逸らした。
「あたいさ、こういうの着て泳いだ事無いんだけどさ、これは何か意味あるのかい?」
(着た事無いって・・・裸でしか泳いだ事無いって事か!?)
ハオは、肝試しの時の事を思い出しながら真っ赤になっていた。
「ありゃあ。ハオ、オ〜バ〜ヒ〜ト気味だにゃ〜。」
「うっしっし〜。初々しいねえ。」
「うふふ〜。」
「フェリ姐も気付いていないのが罪なのじゃ。」
四人は二人の様子を少し離れた所で見ていた。
「あのー。どうして、こんな変わった服で泳ぐんですか?服じゃ不味いんでしょうか?」
四人の方に恐る恐るセシールは聞いた。
「不味くは無いんだけどにゃ。泳ぐには抵抗がある場合が多いからにゃ〜。」
「そうそう、普通の服じゃ水吸っちゃうと重くなっちゃうしね。」
チャオとトロの意見にセシールは納得したように頷いた。
「私は、特別な湯浴みと、トロさんと入れ替わる以外でこんなに薄着になる事は無いもので・・・。」
セシールは周囲の視線を気にしながら恥ずかしそうに言った。
「セシールは特殊な家系なのじゃ。普通の湯浴みはそれ様の服があるのじゃ?」
「はい。湯浴み用の服があります。水の通りが良く、独特の肌触りなんですよ。」
和夜の質問には普通に答えるセシール。
「裸の時と違ってなかなか面白い感じだったよ。」
トロが横から感想を言った。
(でも、にゃんかそりはそりでエッチかもだにゃ。)
チャオは何となく想像していた。
「うっしっし〜。下手に裸よりも色っぽいかもね〜。」
「ある意味それは倒錯的な趣味なのじゃ・・・。」
トロの言葉に少し呆れた顔をして和夜は溜息混じりに言った。

そんな話をしているうちに、テムは既にプールの中に入り浮き輪でプカーっと浮いていた。
「またり〜。ぷかり〜♪」
そして、ハオとフェリアーテも先にプールに入っていた。
「あいつ等何時まで話してるんだ?」
「ふふっ、そのうち気がついてこっち来るさね。ハオは泳ぐの得意なのかい?」
「そこそこかな?フェリーは?」
「これなら、服着てるよりはまともに泳げるね。裸と抵抗あんまり変わらないし、下着と違って水含んで重くならないしね。」
「そ、そうか・・・。」
(さっきのは、服着てって言う選択肢の話だったのか・・・。にしても、今は変に意識して言ってねえのが性質悪いな。変に意識してるのは俺の方か・・・情け無えな・・・。)
ハオはなるべく、フェリアーテの首から上だけを見るようにしていた。その様子を見て、フェリアーテは不思議そうに首を傾げた。

「にゅ?テムとハオとフェリーは既に入っているにゃ。あたし達も行っくにゃ〜。」
ザッバーン!
チャオは綺麗に飛び込んだ。
「むむっ!やるなチャオ。私も負けないぞ〜。」
トロも続けて飛び込んだ。
ビッターン!
「うわ、痛そうなのじゃ・・・。」
和夜は何とも言えない顔で言った。トロはうつ伏せのまま大の字でプカーと浮いて来た。
「トロさんっ!」
セシールは静かにプールの中に入って、浮いているトロに近付いていった。気のせいか歩くスピードがとても速い。
「和夜も一緒に泳ごうにゃ〜。早く来るにゃ〜。」
チャオはプールの中で手を振りながら和夜を呼んだ。
「別にわらわは飛び込まないのじゃ。」
和夜もセシールと同様静かにプールの中に入った。そして、足が届くかだけ確認した。

チャオ達がいるプールは、プールサイドから暫くは浅く出来ていて、真中へ行く程3段階で深くなっている。一番深い所で水深3mある。
近くには、飛び込み台専用の場所がある。その先にウォータースライダー系のアトラクションがある。
その先にメビウス達がいる親子連れの為のプールがある。浅いが、いろいろな仕掛けがあり、子供が楽しめるゾーンと親子で楽しめるゾーンがある。その他にも、海を疑似体験できるゾーンや流れのあるゾーンなど一日では遊び切れない沢山のゾーンに分かれている。

「にゃはははは。」
チャオは笑いながら泳ぎまくっていた。
「チャオって猫半分なのに、何で大丈夫なんだ・・・。しかも、泳ぐの速いし。」
ハオは少しジト目でチャオの方を見ていた。
「でも、本当に早いよね。」
フェリアーテは感心したようにハオと同じくチャオを見ていた。
「負けないのじゃ。それっ!」
「うむむぅ、やるな〜。それぇ。」
和夜とテムは浅い部分で水のかけあいっこをして楽しんでいた。
「セシールは普通に水の中見えるの?」
「はい、我々の祖先は水の住人だったと聞いています。」
ゴーグルをかけたトロの問いにセシールはにっこり笑って答えた。
「今日はいつもにも増して生き生きしてるもんね〜。」
「ええ、とても気持ち良いです。」
「ここで、誰かいい相手でも見つけてもいいかもね〜。うっしっし〜。」
「ええっ!?そ、そ、それは遠慮します。」
トロの言葉にセシールはワタワタしている。そして、逃げるように凄いスピードでその場を離れて行った。

「ん?フェリー???」
ハオはすぐ近くにいたフェリアーテの姿が見当たらないので、周りをキョロキョロした。丁度チャオが目に入った。チャオは下、下とジェスチャーしている。ハオは軽くお礼に手を上げてから、息を吸い込んで潜った。
(!?)
ハオが見たのは、フェリアーテとセシールが手を繋いで、水中でゆらゆらと揺れている姿だった。水面の光が二人を照らして、とても神秘的だった。気のせいか、セシールの髪が水と一体化しているようにも見えた。ハオは暫くその姿に見入っていた。
そのうちに、トロが違う所から二人を見つけて、潜って行き二人を真似し様として、空いているフェリアーテの手を取って同じようなポーズをした。
しかし、一分もしないうちにトロの方がジタバタしだして一気に水面に向かって泳ぎ出した。
それを見ていて、ハオは自分も急に息が苦しくなってすぐに水面から顔を出して息を吸った。
「はあっ、はあっ・・・。あの二人どんな肺してんだ?」
「はおさ〜ん。せっかくですから、みんなでなにかしまそぉ。」
ハオは正面にいるテムの方を見て、答えようとした瞬間、
「しようにゃ〜。」
「どわー。」
チャオが後ろから飛びついて、ハオは見事に水面に顔面を打ち付けた。
「痛そうなのじゃ。近くにいなくて良かったのじゃ。ただ、これから・・・何となく波乱の予感なのじゃ・・・。」
和夜は綺麗に反射する水面の光に目を細めながら呟いた。