肝試し(完結編後半)

ハオは暫く揺さぶっていたが、全く気が付かないので諦めて一旦地面に寝かせた。実際にフェリアーテの全裸の姿はハオには刺激が強すぎた。
「確か、この辺に着てたのがあったよな。」
ハオはフェリアーテが着ていた服を拾ってから、フェリアーテに着せようと四苦八苦していた。
「着せ難いな。ったく、何で俺がこんなことやってんだよ。だあっ!やってらんねえ。」
ハオは着せるのを諦めて、服をかける形でフェリアーテを持ち上げた。俗に言うお姫様抱っこ状態である。
(誰も見てねえよ・・・な。)
「まてw」
ハオはキョロキョロしていると、あからさまにニヤついているトロとそのトロにしっかりしがみつきながらも好奇心の眼差しで見ているセシールがいた。
「ハオ〜。ちゃんと送るんだよ〜。うっしっし〜。」
「わーってるよ!」
ハオは投げやりに答えた。
「何でフェリアーテさんは裸なんですか?」
「それはねえ・・・ごにょごにょ。」
「ええっ!?」
「トロ!無い事無い事吹き込むなよ!」
セシールが驚いた後赤い顔をして、ハオの事を見ている反応を見て突っ込んだ。
「ったく、トロの奴余計な事言いやがって。それにしても本当にフェリーは大丈夫なのか?」
ハオは流石に心配になっていた。足元や周りに気をつけながらも、フェリアーテを心配していた。
暫くして・・・
「う・・・うん・・・。」
フェリアーテが静かに目を開けた。
「お、フェリー気が付いたが。良かった。このまま気が付かなかったらどうし様かと思ったぜ。」
ハオは安心して軽く溜息混じりに言った。
「すまないね。今も力が入らなくてね。話すのもちょっと辛いよ。」
「じゃあ、黙ってろよ。俺がちゃんと連れて行ってやるからさ。」
「言葉に甘えさせて貰うよ。ありがとうね、ハオ。」
(フェリーにもこんな一面があるのか・・・。)
今までになく、過細い声と態度にハオは苦笑いしていた。
瞳を閉じたフェリアーテは、ただ静かにしていた。

そんな頃、ウルフとプレアは謎の影と対峙していた。
「高々、人に作られたおもちゃにやられる私ではない。」
謎の影は自身たっぷりに言い放った。
「うちの事をどう言おうがかまへんけどぉ、ウルフはんを馬鹿にするんは許せへんわぁ。」
プレアはその場でヴィクスーを構えた。
「「LE。あいつの存在を確認できるか?」」
「「はい、特殊なエネルギー体と思われます。」」
「「俺やプレアで何とか出来るか?」」
「「十分に出来ます。通常武器ではなく、特殊武器を使えば簡単に終ります。」」
「「じゃあ、とっとと、終らせるか。人の恋路を邪魔する奴は・・・ってな。」」
「「了解。お持ちの武器にエネルギーを付加させますので、そのままお好きになさって下さい。」」
ウルフはLEとのやり取りの後、大剣を取り出した。
「そんなおもちゃでは、私をどうする事も出来んぞ。」
余裕と小馬鹿にしたような口調で謎の影は言った。
「それは、どうかな?」
そう言って、大剣で謎の影を一閃すると段々と影が薄くなってくる。
「ば、馬鹿な!?」
「馬鹿はお前だ。」
その、ウルフの言葉が終ると、謎の影は跡形もなく消え去った。
「ウルフはん、すごいわぁ。」
「そんな事は無いさ。」
(そう、これは君の力なのだから。)
最後は口に出さずにウルフは言った。
その後は、二体仲良く腕を組んで歩いて行った。

それぞれが、奥にあるライトペンダントを取って、スタート地点へ戻り始めていた。
そして、最終組が到着した。
「ふう、やっとついたねえ。セシール大丈夫?」
「な、何とか。」
そうは言うものの、冷や汗に青い顔でどうみても大丈夫そうに無い。
「さっさと戻ろうね。」
セシールはその言葉に大きく頷いた。
ライトペンダントを手にして、トロが振り返ると何故か全員が後ろを向いて立っている。
「おろろ???」
トロは不思議そうな顔をしている。
(あれ?フェリーが立ってるな?さっき、ハオに抱えられてたような気がしたけど?)
そんな疑問は次の瞬間吹き飛んだ。
全員が振り向くと、顔にあるのは裂けた口だけ。
「!?!?!?」
「うげげっ!」
セシールはすぐにその場で気を失った。トロも驚いたが、セシールが倒れ込む前に抱え込んだ。
「皆やだなあ、そんな事してもあたしは驚かないよ〜ん。」
トロは余裕の表情で、皆の方に寄って行き、口裂けテムの顔を少しつねった。
「ほーら、顔がそのまんまの本物だよー。・・・・・!?本物!?」
流石にトロは今の置かれている状況を察知した。その瞬間全身から嫌な汗が流れ始めた。
「皆、さいなら〜。」
そう言うが早いか、トロはセシールを抱えたまま凄まじい速さで逃げ出した。
しかし、後ろからも、ものすごい速度で追いかけてくる。
「どっひゃーーーん!!!どうなってるのーーー!?」
トロの問いに答えてくれるものは誰も居なかった。

その頃スタート時点では、
「はいっ!全員戻ってきたね。じゃあ、帰ろう!楽しんでくれたかなあ?うっしっし〜。」
トロの言葉で全員が帰り始めた。

「ハオ。」
「ん?どうした?」
「すまないね。あたいがこの様で。」
スタート地点に戻って来てからフェリアーテの服は女性陣によって着せられていた。

「何言ってんだよ。仕方ねえだろ。」
「にゅっしっし〜。」
チャオはフェリアーテとハオのやり取りを見てニヤリと笑った。
「何だよw」
「そのまま、何処かに連れてっても構わないにゃ〜。」
「何処かって何処だよ?」
「ハオのエッチ。」
「うふふ〜。はおさんえっちぃ。」
「そこの二人まてw」
チャオは軽く手を振ってテムと一緒に逃げる様に素早くハオ達から離れていった。
「ったく。んな事する訳ねえだろ。」
「あたいは、構わないけどな・・・。」
「まてまてまて!」
ポツリと呟いたフェリアーテの言葉にハオは素早くツッコンだ。
「それは、冗談としても、今の状況は嬉しいのと、悔しいのが半々かな。」
「何が半分なんだ?」
ハオはそう聞きながらも冗談とフェリアーテが否定してくれたのにホッとしていた。
「こういう風に抱きかかえられているのが嬉しい。それで、体が動かなくてこの先何も出来ないのが悔しいかな。」
「体が動いたら何するんだよ・・・。」
ハオは警戒しながら聞いた。
「お礼のキスくらいさせてよ。ってとこかな。」
「まてw」
「ふふっ。待てなんて言われなくても何も出来ないよ。」
フェリアーテはそう言いながらちょっと辛そうな顔をする。
「話すのも辛いんだろうから、そのまま黙ってろよ。」
「そうする。」
フェリアーテは微笑みながらハオに言った。ハオの方は、照れ臭そうに少しそっぽを向いた。そうしながらも、フェリアーテを持っている腕の力を改めて入れ直してしっかりと抱きかかえ直した。
「ありがとう・・・ハオ。」
フェリアーテの呟きをハオは聞こえないフリして歩いていた。

トロとセシールは何故かスタートラインから皆を見送っていた。皆が見えなく頃になると二人の姿はそこには無かった。
ただ・・・
「くすくすくすくす。」
誰かの笑い声だけがその場で響いていた。