肝試し(後編)

「テムはこういうのは大丈夫なのかにゃ?」
チャオはいつもより大人しめのテムを見ながら言った。
「どきどきわくわくですよぉ。でも、こわいかもぉ。ちゃおさんはだいじょうぶですかぁ?」
「うんっ!あたしは大丈夫にゃ。本物がでたりして、にゃんてね、にゃはは。」
チャオは冗談で言っているのだが、テムは少し青ざめた表情でブンブンと首を横に振った。


「なあ、プレア。俺に幽霊というものは見えるのか?」
「LEが働いて見えるかもぉ。普通のメカやと見えへん思うわぁ。」
「そうか。プレアには見えるのか?」
「はいなぁ。もっと余計なものも見えてしまうかもぉ。くすくす。」
プレアの言葉の意味が分からず、ウルフは首をかしげた。
「幽霊なんてどうでもええんよぉ。ウルフはんとこうして一緒にいれれば、うちはそれだけでぇ。」
そう言いながらプレアはウルフの腕を取った。

「まま〜。ぱぱ〜。ゆ〜れいってなんなの〜?」
ヴィーナは不思議そうに聞いた。
「ここのがどういうのか分からねえから、何とも言えねえなあ。」
メビウスは困ったように言った。
「そうさねえ。本当に居るかは微妙さね。見えるかどうかもね。」
ヴィクスンの言葉に目をぱちくりしながらヴィーナは聞いている。
「まあ、俺が知ってるのはいろいろいるからなあ。」
その言葉にヴィーナは好奇心一杯の目でメビウスを見た。
「ヴィクスンの言う通り、特定の奴にしか見えなかったり、見えても触れる事が出来なかったりな。相手から一方的にやられっ放しになる時もあるな。大人しいのから、厄介なのまで盛り沢山だな。いいか、ヴィーナ。こいつはやばいと思ったら相手しないで逃げろ。俺やママでもかなわない奴がいるからな。」
(あたいはかなわなくても、メビがかなわない奴なんているのかねえ?)
ヴィクスンはメビウスの言葉を聞いて、そう思わずにはいれなかった。ヴィーナの方は、真剣にメビウスの言葉を聞いて頷いていた。

「幽霊なんて怖くないのじゃ。出てきたら逆に呪ってやるのじゃ。」
和夜は強気に言っていた。
「まあ、あんまり騒ぎは起こさないようにして下さいね。」
リラムは少し心配そうに言った。
「大丈夫なのじゃ。先生には迷惑は掛けないのじゃ。」
(本当に大丈夫かな?)
リラムは言葉に出さず心でそう思いながら和夜を見ていた。
「あ、そうそう。もしかしたら、私途中で用事が入るかもしれません。その時は申し訳ないんですが、お一人で行くか、他の方と合流して下さいね。」
「分かったのじゃ。」
やる気満々な和夜はあんまりリラムの話を聞いていなかった。
(急用来てくれた方が良いのかな?)
リラムは何となくそう思っていた。

「さーてと、皆行った事だし。あたし達もいこっか。」
「は、はい。」
トロの言葉にオドオドしながらセシールは言った。
「まあ、そんなに怖がらなくても大丈夫だって。いざとなったらあたしがついてるよ。うっしっし〜。」
「宜しくお願い致します。」
セシールはカチンコチンになりながらロボットみたいにお辞儀しながら言った。
(こりゃ、よっぽど怖いんだな。ここまで怖がる人初めて見たよ。)
トロは少し感心していた。


暫くして、途中途中悲鳴が上がったりしていた。

「ハオは怖くないの?」
「ああ、怖くないぜ。まさか、フェリー怖いのか?」
意外そうな口調でハオは聞いた。
「怖がって欲しい?」
いつものニヤニヤ笑いではなくにっこりと笑いながら言うフェリアーテ。ハオは何だかいつもと違うので反応に困っていた。
「まてwそうは、聞いて無えだろ。」
「そうね。全てじゃないけれど、怖いのもいるわよ。」
(フェリーがびびる幽霊ってどんなんだ?)
ハオは意外そうな顔をした後、少し考え込んだ。フェリアーテはそんなハオを微笑みながら見ていた。その視線に気が付いたハオだったが、何も言わずに目を逸らした。
(今日のフェリーはいつもと勝手が違ってやり難いな。まあいつものフェリーでもやり難い事には変わらないんだが・・・。)
ハオは心の中で苦笑いしていた。

「はわわぁ。ちゃ、ちゃおさ〜ん。」
テムは青い顔をしながら、チャオの背中を叩いて呼んだ。
「どうしたにゃ?」
「あ、あのひとぉ。か、かおがないですぅ。」
「どんな感じかにゃ〜?」
チャオが振り向くと、顔が無い。
「!?!?ひえぇ、おたすけぇ〜!!!」
テムは一目散にその場から逃げ出した。
「にゃ???」
チャオは不思議そうな顔をして凄まじい速さで離れていくテムを見送っていた。
「はっ!テム〜。待つにゃ〜。そっちはコースと違うにゃ〜。」
そう言いながら、チャオはテムを追いかけた。
「くすくすくす。」
チャオが離れていく所で微かに笑い声だけがした。

「おや?和夜さんちょっと待って下さいね。」
リラムはビジフォンを取り出して出た。和夜はリラムを見上げながら会話が終るのを待っていた。
「すいません。どうやら、最初に言っていた用事が入ってしまって・・・。」
「仕方ないのじゃ。わらわは構わないから行くのじゃ。」
「はい、じゃあ、お言葉に甘えまして。」
(大丈夫かな。一人にしてしまって。)
言葉とは裏腹にリラムはいろいろな意味で心配だった。ただ、用事も入ってしまったので仕方なく、その場を後にした。
「ふっふっふ。これでわらわは自由なのじゃ。幽霊でもなんでもかかってくるのじゃ。」
リラムを見送った後、和夜は一人で堂々と歩き始めた。

「ぱぱ?まま???」
ヴィーナは突然繋いでいた手の感触が無くなって、びっくりして二人を呼んだ。
「ヴィーナ???」
メビウスとヴィクスンも突然手の感触が無くなった上に忽然と消えたヴィーナは何処かと呼びながら、周囲をキョロキョロしていた。
「あんた、これはどういう事なんだい?」
ヴィクスンは流石に突然の出来事に焦って言った。
「わからねえ・・・。」
(マジで幽霊みたいのがいるんじゃねえのか?)
メビウスは真面目な顔をして辺りを見渡していた。
「ふええ〜。ぱぱ〜。まま〜。」
ヴィーナはその場で泣き出したが、誰も答えるものは居なかった。