肝試し(中編)

肝試し1日前・・・
「なあ、チャオ。」
「にゃ?」
突然声をかけられたチャオは不思議そうにメビウスを見返していた。
「フェリーの奴は昨日から風呂場に閉じ篭って何やってんだ?」
「うんとねー。何でも禊だってにゃ。」
「は?禊???」
チャオの言葉にメビウスは素っ頓狂な声を上げた。
「あちしは禊ってなんの事だかわからにゃいけど、そう言ってたにゃ。」
「まあ、禊ってのは身を清めたりする事なんだけどよ・・・。何でフェリーがってのが分からん。まあ、別にいっか。したいようにさせといてやりゃあ良いわな。」
チャオはメビウスの意見に頷いた。


「いやあ、無理言って悪かったねえ。」
「いえいえ、楽しそうだったもので。」
トロの言葉にセシールはニコニコしながら答えた。
「とりあえず参加者はっと・・・。」
トロはメモリーカードをロードしてメンバーをホログラフで出した。
チャオ&テム、トロ&セシール、プレア&ウルフ、フェリアーテ&ハオ、ヴィーナ&メビウス+ヴィクスン、ETC・・・で全員で26組53名。
「ヴィーナの保護者として三人で構わないよね?」
トロはメンバーを見ながら言った。
「ご家族での参加は一組だけですし良いと思いますよ。」
「じゃあ、これで決定って事で皆に連絡流しとくね。」
「宜しくお願いしますね。」
「うっしっし〜。楽しみ楽しみ。」
トロのたのしそうな顔を見てセシールは微笑んでいた。


「おいおい、知り合いだけじゃなくてこんなに来るのかよ。」
ハオは送られてきた案内メールに驚いていた。
「フェリーに連絡取ろうとしたら取れねえし・・・。チャオに聞いたら取り込み中としか答えてくれねえし。」
そう言いながらもハオはチャオのマンションの前まで来ていた。
「直接確かめるまでだ。」
ピンポーン
「にゃ?ハオ???」
「よっ。ちっとフェリーの様子見に来た。いるんだよな?」
「まあ、いるんだけどにゃ〜・・・。」
(何で言いよどむんだ?)
「入っても良いか?」
「うん、今ロック外すからど〜ぞだにゃ。」
ハオはロックが外れた玄関から中に入った。
「いらっしゃいだにゃ。」
「ああ。今日はチャオしかいないのか?」
「うんっ。明日の為にめびぞ〜もプレアも出かけたにゃ。」
「そっか、でフェリーは?」
チャオは言い難そうな顔をしている。
「何だよw」
「探してみると良いにゃ。それしか言えにゃい・・・。」
(今日のチャオなんか変だな。ってかフェリーに何かあるのか?)
「分かった。探させてもらう。」
ハオはそれだけ言って中を捜し始めた。


「我御名において・・・汝をかの場所へ・・・導かん・・・。」
フェリアーテは水を浴びながら小さな声で呟いていた。
「ん?あっちで声がするな。」
ハオは声のする浴室の方へと向かった。
(げげっ!)
ハオは浴室の入口の所で固まっていた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
フェリアーテは何かを言っているのだがハオには何を言っているのか分からなかった。
一糸纏わぬ姿にハオは目を奪われていた。
赤く濡れた綺麗な髪・・・。
透き通るような綺麗な白い肌・・・。
そして、いつもとは違う不思議な雰囲気・・・。
(本当に・・・フェリーなのか?)
ハオはそう思わずにはいれなかった。
「覗きはいけないんだにゃ〜。」
「!!!!!!!」
後から突然声をかけられ声も出ず、ハオは飛び上がった。そして、恐る恐る振り向いて、声の主を確かめた。
そこには、少しニマニマしているチャオが立っていた。
「何だよw」
「じ〜っと見ちゃって、ハオのエッチ。」
「・・・・。」
ハオは赤くなって黙り込んだ。
「まあ、良いにゃ。フェリーは昨日からあんな感じなんだにゃ。話し掛けても反応無いから無駄だにゃ。まあ、もっと見ていたいって言うならかまわにゃいけどね。」
チャオはそう言ってからニヤリと笑った。
「帰る。フェリーには明日ちゃんと来いとだけ言っといてくれ。」
「わかったにゃ。」
何とかその場から立ち去りたいハオはそれだけ言って、風呂場を後にした。
玄関まで来ると、チャオが見送りに来た。
「でもさ〜。」
「ん?」
「エッチな意味じゃにゃくても、綺麗だにゃ。改めてそう思ったにゃ。」
「そうだな。いつもの雰囲気とも違ったしな。」
そのハオの言葉にジト目で見るチャオ。
「だから・・・何だよ!w」
「そりゃあ、全裸だしにゃ〜。」
「そこを強調するなよ!」
赤くなるハオを見てチャオはニヤッと笑った。
「じゃあな。」
「うんっ!まったね〜、チャオ♪バイバイ!」
チャオが手を振るとハオは軽く手を振り返して出ていった。
「ったく、余計な事強調しやがって・・・。」
ハオはそう言いながらも、フェリアーテの姿が焼きついていたのは事実だった。


肝試し当日
ハオだけでなくフェリアーテを知る人間は驚いていた。
「フェリー・・・だよな?」
「ん?そうだよ。」
ニッコリと優しく微笑むフェリアーテにハオは少し赤くなった。
そこで、何か突っ込まれる所だが何も言わない。
外見もいつもと違い、髪の毛は綺麗なストレート。着ている服もいつものきわどい黒のコスチュームではなく、白い露出を抑えた服を着ている。
「何だか今日のフェリーいつもと違うね。」
ヴィクスンは感心した様に見ている。
「さあ、いよいよ肝試しスタート!!!」
トロの元気な声が辺りに響く。
「奥に有るライトペンダントを取って戻ってきてね。皆の度胸と無事を祈ってるよ〜。うっしっし〜。」
そう良いながら、トロはライトを顔の下から照らした。何人かは笑ったり恐がったりしていた。
セシールはトロの隣で既にガタガタ震えていた。

「さあ、ハオ一緒に行こう。」
「あ、ああ・・・。」
ハオは差し出された手に自然と手を伸ばした。
「手を放さないでね。」
「お、おう。」
ハオはいつもと違うフェリアーテにドキドキが止まらなかった。