夢?
「あーあ、良く寝た。」
ハオは欠伸をしながらベッドで伸びをした。
「ん!?」
伸びをした後で何か違和感を感じた。いつもの見慣れた自分の部屋じゃない事は確かだった。
「ハオおはよ。」
「何だフェリーかおはよう。って・・・待てw」
ベッドの枕元にフェリアーテがいる。いつもと感じが違い優しく微笑んでいる。しかも、エプロン姿で。
「ん?何だい?」
不思議そうにハオの顔を覗き込むフェリアーテ。
「言葉使いはそのままか・・・。」
ハオはボソッと呟いた。
「とりあえずご飯食べとくれ。急がないとチャオの3回忌に遅れちまうよ。」
「ああ、食べるけどさあ・・・何でフェリーがここにって・・・。待て、待て、待てw」
ハオは耳を疑った。
(チャオの3回忌?俺は担がれているのか?)
「だから、何だい?」
フェリアーテの不思議そうしている顔を見るが変に嘘をついている様には見えない。いつも見るニヤニヤ笑いもしていない。
「いや・・・何でも・・・無い。」
フェリアーテはハオの言葉に首を傾げる。
「何だかねえ。まあいいさね。とりあえずこっち。」
ハオは狐につままれた気分でフェリアーテと一緒に見慣れない部屋へと移動した。そこには湯気の上がっている料理が置いてある。
「さあ、食べとくれ。服は置いてあるから。あたいは先に着替えるよ。」
「あ、ああ・・・。」
良く分からないうちにハオはとりあえず朝ご飯を食べ始めた。
「うまいし・・・。」
ハオは意外そうな顔をしながらと食べ続けた。
(しかし・・・どうなってるんだ?)
食べ終わってから少し一息ついて改めて考え直す。
「ハオ!食べ終わったんなら早くしなって。遅れるよ。」
フェリアーテの声でふと我に帰る。
そして、フェリアーテの方を見てハオは驚いた。いつも見ているフェリアーテは黒のちょっときわどいコスチュームだったが、今着ているのは見た事も無い神官着のような服だった。
「フェリーそれは?」
「ん?ああ、久しぶりだからね。今日くらいだよ着るのはね。喪服代わりさね。」
少し、苦い顔をして言うフェリアーテ。
(どう見ても嘘ついてるようには見えねえんだよな。)
「ほら、良いから早く着替えなって。」
フェリアーテに手を引かれるまま部屋を移動する。既に喪服がかけてある。
(あれ?俺って喪服持ってたッけ???)
そんな疑問を抱きながらもフェリアーテに着せられていくハオ。
「ハオ。自分で着なってば。」
フェリアーテは途中で業を煮やしてボーっとしているハオに言った。
「あ、ああ、悪い。」
生返事だったが、とりあえず自分で着出したのでフェリアーテは部屋から出ていった。
「しかし・・・チャオの3回忌って何だ?しかも何で俺とフェリーが知らない所で一緒に住んでるんだ?さっぱり分からねえぞ?・・・そうか、こりゃ夢だ。」
ハオは自分なりに考えてありえない事だらけだったのでとりあえずの結論を出した。そして、フェリアーテの案内のままに何処かの会場へ向かった。
会場には見た顔が複数あった。
「よっ!ハオにフェリー。宜しくやってっか?」
ハオがキョロキョロしてるとメビウスから声をかけられた。
「ああ・・・まあ、それなりに・・・。」
ハオには正直良く分からないので、適当に誤魔化した。
「こんにちはなの。」
「ん?どっかで見た事あるような・・・?」
声をかけてきたフォマールには確かに覚えがあるのだが思い出せない。
「久しぶりだね、ヴィーナ。随分大きくなったね」
フェリアーテが代わりに返事する。
「ヴィーナ!?」
ハオは素っ頓狂な声をあげる。
(ちょっと待てよ・・・。ヴィーナって小さくなかったか?何でこんなに普通サイズなんだ?)
ハオはまじまじとヴィーナを見る。ヴィーナの方も首を傾げながらハオを見返す。仕草も含めて確かに面影がある。
「それにしても、もうあれから3年か・・・早えもんだ。」
メビウスが小さく呟く。
「そうだね・・・あたいと、メビウスしかいなくなっちまったもんね・・・。」
フェリアーテも少し俯いて悲しげに呟く。
(そういやあ・・・プレアの姿が無いな。聞きたい所だが止めとくか。)
ハオはその場を察してあえてプレアの事は聞かなかった。
それから少し近況報告をし合ったハオを含めたメンバーは、チャオのお墓のあるという霊園に移動した。すでに憩いの場のメンバーや他にも何度か顔を見た人達がいる。またハオの知らない人達も大勢いた。
ハオは一通り見渡してからチャオの墓前に立った。ふと日付を見た。
(3年後の日付・・・俺の記憶が正しければ3年後ぴったりだな・・・。まさか夢が覚めてチャオが今日死ぬって事なのか!?縁起でもねえな。)
苦笑いしながらも逆算して合っている事に変な違和感を感じていた。それと、チャオの知り合いがこんなにも多い事に驚いていた。
弔いの言葉が述べられ、花束、メッセージカードなどが次々と墓前に飾られて行く。
「なんか・・・チャオ!つって出てきそうだよな。」
ふとハオは呟く。
「そうさね・・・。」
フェリアーテはその言葉に少し涙を浮かべている。初めて見る意外な反応と表情に少しどきどきしていた。
しかし、周りもハオの言葉で沈黙していたり、フェリアーテの様に涙ぐんだり、中には泣き出すものも少なくなかった。
(もしかして、俺って悪い事いったか!?)
ハオは苦い顔をしてから何となく居辛くなったので、フェリアーテの手を引いてその場を離れた。何でフェリアーテの手を引いたのかは自分でも良く分からなかった。多分、手を握った時に強く握り締めてきたからかもしれない。でも、そんな事は不思議と気にならなかった。
「悪い。」
ハオは少し離れた所まで来てからフェリアーテに謝った。
「ううん。構わないさね。あたいだってそうだったら良いなって思うしね。情け無いとこ見せちまったね。」
フェリアーテは涙を吹いて軽く笑う。
「なんかさ、今日のフェリーはいつもと違うよな・・・。」
何となく気恥ずかしくなってそっぽを向きながら言うハオ。
「あたいだってしんみりする事くらいあるさね。慰めてくれるかい?」
「まてw」
そう言ってハオはフェリアーテの方に向き直る。いつもだったらここでニヤニヤ笑う所なのだろうが今日は何か違う。フェリアーテの顔を見てドキドキしている自分が分かる。
「慰めになっか、分かんねえけど・・・。」
そう言いながら辺りに人が居ないのを確認してから、フェリアーテに自分から唇を重ねた・・・。
「ハオ!!!」
突然の声でハオははっと我に帰る。
ハオは寝ぼけ眼で辺りを見る。目の前に母親の顔がある。
「何だ、やっぱり夢か・・・。」
「アカデミー遅れるから早く支度なさい。」
「はーい」
ハオは直ぐに着替えて自分の部屋を出た。
既にある朝食を食べながらテレビを見ていた。
「今日未明、元メディカルセンターの外科医だったチャオさんが亡くなりました・・・・・・」
「!?」
ハオは朝食のパンを吹き出した。
「夢・・・だよな?」
その問いに答えてくれるものは誰もいなかった。