新しい道(中編)

チャオは気絶してから3日間気が付いていなかった。
「先生、チャオさんはどうなんでしょうか?」
フレナは担当医に心配そうに聞く。
「正直、辛い所だな。肉体的にもかなり厳しいし、見えなかったと言う恐怖から来る精神的ショックもあるんだろう。」
担当医の言葉にフレナは黙って俯く。
「だがな、諦めた訳じゃない。絶対に助かる。いや、助けるんだ。その為にも、フレナ、協力を頼むよ。」
担当医はフレナの両肩に手を置いて言った。
「はいっ!」
フレナは顔を上げて元気良く笑顔で答えた。

ルミナスは一旦気が付いた事を知らされて喜んでいたが、
失明しているかもしれない事と、未だに気が付かない事にショックを受けていた。
そして、出てくる食事に手も付けずただ、祈っていた。
「チャオ・・・。お願い、気が付いて。そして、また私に笑顔で話しかけて・・・。」
呪文を唱えるかのように、何度も何度も同じ事を呟いていた。
同室の患者や担当している看護婦は気の毒そうに見守る事しか出来なかった。

5日目にチャオは気が付いたが、目を開けたはずだが何故か真っ暗だった。
周りで何か計器の音がするが、良く分からなかった。
{ここは・・・一体何処なんだにゃ・・・}
まだ、少しボーっとしていたが、体のあちこちの痛みで段々意識がはっきりしてきた。
「ふにゃ〜〜!!!」
枕元で様子を見ていた、フレナはびっくりしてチャオの方と計器をを見た。
「先生!チャオさんが気がつきました。すぐ来て下さい!!!」
そう言ってからすぐに暴れ出しそうになるチャオに痛み止めを打った。
「痛・・・くないにゃ???」
チャオは一瞬腕に痛みを感じたが、不思議と痛みが引いて行くので不思議に思い首を傾げた。
「チャオさん大丈夫ですか?」
チャオは声の方を見るがやはり真っ暗で何も見えない。
「誰かいるのかにゃ?」
急に不安になってチャオは身を強張らせる。
「私はフレナといいます。ここメディカルセンターの看護婦ですよ。」
フレナはチャオをこれ以上不安にさせない様に出来るだけ優しく言った。
「メディカルセンターかにゃ?何で真っ暗なんだにゃ?」
チャオは自分が見えない事には気が付いていなかった。
フレナはその質問にそのまま答えて言いか分からず、困っていた。
「チャオさん動いちゃダメだ!」
突然他の所から声が聞こえてチャオはビクッとした。
「チャオさん。担当の先生ですよ。」
チャオは置かれている状況が分からないのと、真っ暗なので混乱していた。
「チャオさん。貴方は大怪我をして、ここに運ばれてきたんだ。それが6日前で、一回気が付いたが、痛みで気絶して5日が経ったんだ。」
チャオはそう言われて、少し考え始めた。
{あたし・・・・・・・・}
暫くして全てを思い出した。
「状況は分かったにゃ。それで・・・真っ暗なのは何でだにゃ?」
「チャオさんの怪我から言って正直生きている事が不思議だった。真っ暗なのは目が見えないからだ。それは、一次的なものかもしれないし、もしかしたら一生かもしれない。」
担当医は辛そうに言った。フレナもその様子を見て苦しい表情をした。
「失明かにゃ・・・。まあ、仕方ないかもしれないにゃ。」
チャオは溜息混じりに呟いた。
{割りきれるの!?}
フレナはものすごく驚いていた。
「あっ!そうだにゃ。一緒に運ばれて来たルミナスはどうなんだにゃ?大丈夫なのかにゃ?」
チャオは焦って二人に聞いた。
「ルミナスさんは大丈夫ですよ。逆にチャオさんが気が付かなくて心配されているみたいですよ。」
「そっか。だったら伝えて欲しいにゃ。あたしは気が付いたから心配しなくても良いって。」
フレナの言葉に安心して、チャオはにっこり笑って言った。ただ、焦点の合わない眼で笑うチャオを見て、フレナは泣き出しそうになっていた。
「フレナ。早速伝えてきてくれ。後は私が見る。」
担当医の言葉に声が出ないフレナは頷いて病室を後にした。
チャオは残った担当医の検査や質問には普通に対応した。
「それじゃあ、疲れたでしょうから今日はゆっくり休んで下さいね。」
「わかったにゃ。」
担当医が病室から出ていくと、チャオはあちこちキョロキョロしてみた。
やはり真っ暗で何も見えない。光りすら感じれなかった。
言い様の無い不安感と恐怖感が襲い、チャオはその場で震え出した。
そして、チャオは自分の身を抱えながら泣き始めた。
「暗いにゃ・・・恐いにゃ・・・寒いにゃ・・・・・。」
消え入りそうな声で呟きながら震えが大きくなりガタガタ震え出した。
「何も・・・・・・・見えない・・・・・・・・・にゃ・・・・・・・・・・。」
そう最後に一言呟いてから、気を失う様に眠ってしまった。


フレナは、こぼれそうになる涙を堪えながら、ルミナスのいる病室へ向かっていた。
{あんなに小さいのに無理して可哀相・・・。}
担当医には普通に移ったかもしれないが、フレナにはチャオが我慢していた事が分かっていた。
ルミナスのいる病室に入たフレナが見たのは。食事をとらずに、頬がこけてブツブツと何かを言っている本人だった。
「ルミナスさん!」
フレナの声にルミナスは全く反応しなかった。
「チャオさんが気が付いたんですよ!!!」
「チャオ」の単語を聞いた途端、急に振り向いた。流石にフレナはびっくりして目をぱちくりした。
「チャオが気が付いたの!?それで!?」
「チャオさんがルミナスさんの事を心配していました。それと、伝言で「私は気が付いたから大丈夫。」だそうです。」
フレナの言葉を聞いて、安心したのかルミナスは一回大きく溜息を付いた。
「じゃあ、チャオに伝えて。見っとも無くないくらい回復したらすぐに会いに行くって。」
さっきまでとは別人の様ににっこり笑ってルミナスは言った。
「はい、必ず伝えます。ルミナスさんも早く回復してチャオさんに会ってあげて下さい。」
「ええ、そうするわ。」
そして、フレナは一礼してから病室を後にした。
「早く、チャオさんに伝えてあげたいな。」
来る時とは気持ちが変わって、ニコニコしながらナースステーションへ向かって歩き出した。