森での二人

チャオとフェリアーテはラグオルの森に降り立っていた。
博士からのラッピーの調査依頼を終えてラグオルへの転送装置を目指していた。
「ね〜、フェリー。」
チャオはフェリアーテを覗き込むような格好で聞いた。
「ん?何だい?」
フェイアーテは不思議そうにチャオに聞き返した。
「今回の調査でラッピーって結構たくましいって思ったにゃ。」
「そうだねえ。逃げ足も速いし結構繁殖力も強いみたいだからねえ。敵がいなくなったらこの森はラッピーの森になるかもしれないね。」
チャオがにんまり言う言葉にフェリアーテは満更嘘でも無さそうに言った。
「ラッピーだけじゃなくて、皆幸せに暮らせるといいにゃ〜。」
チャオはほんわかとした顔で言う。
「そうさね、ヒルデも元々はおとなしい性格らしいしね、諸悪の根源を絶つしかないんだろうね。」
(悪の根源はきっとこの先に・・・)
一旦はチャオの顔を見て微笑んだフェリアーテだったが、一方を見つめて厳しい表情になっていた。
「にゃ???あっちに何かあるかにゃ?」
チャオは表情の変わったフェリアーテを見て不思議そうに訪ねた。
「いや、今のチャオの顔を見て言う台詞じゃないと思ってね。」
フェリアーテは苦笑いしながら答えた。
その後はフェリアーテは静かに、チャオは鼻歌交じりに歩いていた。

ラグオルへの転送装置に近付いた時、二人は目の前の異変に気が付いた。
「にゃ?」
「ん?」
ラッピーが何かに寄って集って攻撃している。攻撃している相手は見た事も無いモンスターだった。ただ、どう見てもラッピーに一方的にやられている様にしか見えなかった。
「フェリー。あれどうするにゃ?」
チャオは下から覗きこんで聞く。
「決まってるさね。」
フェリアーテはそう言ってチャオにウインクしてから、走り出した。
「どうする気だにゃ???」
チャオはフェリアーテを目で追った。
「そこのラッピー共!待ちなっ!!」
フェリアーテの言葉にラッピーの何匹かが振り向く。
「痛い目見たくないならとっとと失せなっ!!!」
インペリアルピックを構えた上にものすごい迫力でラッピーの数匹はすぐに雰囲気を察して逃げ出した。
何匹かはフェリアーテに向かっていくが、一気に蹴散らされた。
その戦闘御と様子に気がついた他のラッピー達も何時の間にか逃げ出していた。
「ったく、ふう、やれやれさね。」
フェリアーテは溜息をついて蹲っている生物を見下ろした。
チャオも軽く走ってきてしゃがみ込んでじーっと見ていた。
少しすると蹲っていた生き物は恐る恐る起き上がった。
50センチくらいの小さなドラゴンだった。ドラゴンは二人を見て少し怯えていた。
「おお〜ちっこいドラゴンだにゃ。可愛いにゃ〜。」
チャオはにっこり笑ってドラゴンをまじまじと見た。
「まあ、あたい等の言葉が分かるかどうかだけどね。こんだけちっこいとラッピーにも歯が立たないのかねえ。」
情け無い苦笑いをしながらフェリアーテは言った。
「ディメイト食べるかにゃ〜?」
チャオはディメイトを取り出してドラゴンの前に差し出した。
ドラゴンはビクッとしたが、何もされない事が分かったのか、匂いを嗅いでからディメイトを食べた。
「くえー。」
軽く鳴いた後、チャオに擦り寄ってきた。
「喜んでいるのかにゃ?」
「じゃないのかい?餌付けされちまうドラゴンってのも、何だかねえ。」
不思議そうに言ってるチャオに答えながら複雑そうな顔をするフェリアーテだった。
「迷子かにゃ〜?」
「どうかねえ?まあ、暇だし親探しでもして見るかい?」
「うんっ♪」
チャオはドラゴンに手を差し伸べた。
ドラゴンはビクビクしていたが敵意が無いのが分かるとチャオの手に擦り寄ってきた。
「にゃはは。くすぐったいにゃ。」
チャオは手に感じる不思議な感覚に笑っていた。
「しゃあない、とりあえずチャオに懐いたから抱えていくんだね。あたいが何か出たら対処しとくから。」
フェリアーテは少し頭をかながら言った。
「お〜し、親探しにいっくにゃ〜。」
「くえー。」
チャオの言葉にドラゴンは吠え(?)た。
そして、二人と一匹の親探しか分からない森の探検が始まった。