彼女の最終決戦(中編)



・・・惑星モタビア・・・
最終決戦に向かったルディ達を見送ったラジャ達は、エアポートで帰りを待つ事にしていた。
「まあ、わし等は留守番だから気楽なもんじゃが、逆に最後の決戦に助力できないのはちと惜しいのう。」
ラジャは出された飲み物を飲みながら、複雑な感じで言っていた。
「そうだね、ボクも出来れば行って一緒に戦いたかったよ。」
パイクは、端の方で斧を構えながら言った。
「フォーレン様がいらっしゃれば問題は無いと思われます。ルディ達ならばやってくれるでしょう。」
フレナはコンソールを見ながら二人に向かって言っていた。
「ところで、ハーンはどうしたんじゃ?」
「あれ?そういえば居ないね?」
ラジャとパイクは不思議そうに周りをキョロキョロする。
「ハーンさんなら語婚約者の所に行かれたそうです。」
「なんじゃ、それなら構わんか。パイク。お主も家族の所に行ってやってはどうじゃ?」
冷静に言うフレナの言葉にラジャは納得したように頷いてから、パイクの方に向き直って聞いた。
「全てが終わったら、行くよ。」
パイクは静かにそう答える。
「ラジャさんは終わったらデゾリスに帰るのですか?」
「そうじゃな、とりあえずお付の二人が待っておるからのう。しかし、残念じゃわい。シェスもこちらに残してやりたかったのう。フェリアーテが居ればわしの代わりに同行させたものを。」
「何度か話は聞かせてくれたよね。そのフェリアーテって人の事。だけど、何でシェスを残したかったの?」
パイクはフェリアーテの話に反応はしたものの、シェスの事についてラジャの言っている意味が分からずに聞いた。
「うむ、わしが言うのもなんじゃが、正直あの中では役者不足じゃと思っとる。本人もスレイがおるしその事は薄々感じて居ると思う。」
「私とフォーレン様のような感じですね?」
「そうじゃな。ただ、フレナにはフォーレンとは違う事が出来る。その分良いのだろうが、言い過ぎかも知れんが、スレイの劣化コピーみたいなものじゃからな。確かにスライサーを使えるが、他のメンバーと比べると殲滅力的には低く打たれ弱さもある。今も本人は戦い以外の所でも苦しんでいるかも知れん。まあ、そんな余裕はないかもしれんがな。」
「確かにそう言われるとそうかもね。ラジャって真面目に話そうと思えば離せるだって今始めて知って感心したよ。」
「フォフォフォ、これでも一応神に仕える身じゃからな。」
パイクが感心しながら言う言葉に、ラジャは笑いながら言っていた。
「そうだ、話は戻るけど、そのフェリアーテって言う人はそんなに凄いの?」
パイクはちょっと疑わしそうな感じで聞いた。
「ああ、わしが言う事に余り説得力が無いのかも知れんが、今ここに居ればわしなんかより数段上じゃったのは間違いない。ここに辿り付ける時間ももっと短くて住んだと思う。」
「そんなに凄い方なんですか。」
フレナは感心しているのかいまいち分からない口調で言った。
「それこそ、さっきのスレイとシェスの例えではないが、わしがフェリアーテの劣化コピーみたいなもんじゃ。わしが師ではあるが、あやつの素質、実力も十数年前の時点でわしを上回っていたと思っておる。なぜ、突然音信普通になってしまったのか未だにわからんままじゃ。何処かで生きて居るなら、せめて顔くらい拝みたいものじゃ。」
ラジャは、昔のフェリアーテの姿を思い浮かべながら、溜息混じりに言っていた。
「もしかしたら、何処かに居るのかもしれないよ。記憶とか失っているのかもしれないし。そのフェリアーテって人の外見ってどんな感じなの?教えてくれれば街とか回りでも聞いてみるよ。」
「ああ、髪の毛は燃えるように赤く長く、肌は雪のように白い、瞳は瑠璃色。背の高さは、ハーンくらいかのう。」
ラジャは思い出すように目を閉じながら言う。
「あの、今私の目の前に現れて立っている方の事でしょうか?目を閉じているので瞳の色は分かりませんが、今ラジャさんがおっしゃっている特徴にそっくりなのですが?」
「なぬ?」
「えっ!?」
フレナが冷静に言う言葉に驚いて、ラジャとパイクが振り向く。すると、フレナよりも高いフェリアーテの姿が映る。ガンビアス大寺院の神官服を着て手を合わせているフェリアーテが立っていた。
「フェ、フェリアーテ・・・なのか!?」
ラジャは信じられないと言った感じで、近付きながら言う。
「ん?」
フェリアーテは呼ばれた気がして、片目だけ開ける。そこには、以前よりも年老いた感じのラジャが居た。それ以外にも奥の方にモタビアンが居る。更に下からの視線に気が付いて、見下ろすとロボットの女の子が立っている。
「戻って・・・これた・・・。」
「フェリアーテ、フェリアーテなんじゃな?」
ラジャはまだ信じられないと言った表情で、聞き返す。
「ああ、そうだよ・・・。ただいま・・・。ラジャ様・・・。」
フェリアーテは目に涙を溜めて、頬から零れ落ちるのも気にせずにその場で泣きながら呟くように静かに言った。

フェリアーテは今の状況を、ラジャだけで無くフレナやパイクからも聞いていた。
「そうかい。あたいは間に合わなかったのか。」
三人の話を聞いた後、フェリアーテは苦笑いしながら言った。
「でも、ラジャに会えたんだし良かったと思うよ。」
「そうですね。ルディさん達が帰ってきたら紹介しなくては。」
「いや、あたいは何もして無いし。ただ、ラジャの弟子ってだけだからね。」
(戻ってきたけど、あたいが来た意味無かったかもしれないね・・・。)
パイクとフレナに答えながらも、フェリアーテは内心では、少し気落ちしていた。
ちょこんと座っていたフレナが椅子から飛び降りる。
「どうしたのフレナ?」
「なんじゃ、この強い邪気は・・・。」
「六時方向に敵と思われる存在が出現しました。」
(この気配は・・・アルディ・・・。)
フェリアーテだけは黙って、その場で少し震えていた。

4人は揃って、スペースポートの外に出た。
砂漠の中に一人だけ宙に浮いている存在がある。
「留守を預かるというのも十分な役目。ここが無くなれば奴らの帰る場所は無い。老いぼれに毛玉におもちゃ・・・。ん?」
アルディは見下したように言いながら4人の方を見る。
「フェリアーテ?そうか、舞い戻ってきたのか。まあ、いい。ここに居るものも、あちらに行ったものも居なくなり、世は闇に飲み込まれる。」
「お主の好きにはさせん!」
「ルディ達の帰る場所はボクらが守る!」
「フォーレン様から授けられた力、ここで全て出し切ります。」
三人はアルディに向かって言い放つ。フェリアーテは蛇に睨まれた蛙のように脂汗を流して一歩も動けないで居た。
「貴様等なぞ、相手ではない。主力の居ない貴様等なぞただの雑魚だ。」
アルディはニッと不適に笑いながら吐き捨てるように言う。
「よくも言ったな!うぉぉおおおお!!!!」
「神よ我らにご加護を・・・。」
「バリアフィールド発動。」
三人はそれぞれ、動くがそれでもやはりフェリアーテは全く動けなかった。
「何をした所で無駄だ。」
「悪しきものよ、聖なる炎で燃え尽きるのじゃ!!!」
アルディが呆れた顔をして居る中、ラジャが手をかざすと白い炎がアルディに向かっていく。そして、アルディは白い炎に包まれる。
「フォノンメーザー、照準セット。発射。」
フレナの小さな体の内部から出てきた砲塔から、閃光と共に発射される。
「うりゃぁぁあああああ!!!食らえっ!」
更にそこへパイクが両手斧で一気に振り抜く。
「どうだっ!」
手応えを感じたパイクは攻撃を受けてもやっている方を向いて誇らしげに言う。
シュンッ!
「っ!危ないっ!!!」
「えっ!?」
パイクを横から抱え込んでフェリアーテが横に飛ぶ。
上手く着地して、全員がパイクの居た位置を見ると、砂漠の砂が真っ黒でドロドロな異質のものに変わっていた。そして、そこから黒い煙が立っていた。
「あ、ありがとう。」
「構わないさね。だけど・・・あいつは・・・ヤバイよ・・・。」
礼を言われたフェリアーテだったが、言い終わった後、再び膝ががくがくと震えていた。
「フェリアーテ、まさかあやつあの時のか?」
ラジャは気が付いたように聞く。
「ああ、そうさね・・・。」
そこまで会話が終わると、もやが晴れる。
「蚊ほどにも効かないね。今度はこっちから行くよ・・・。」
「敵は無傷です。」
「そんな馬鹿なっ!?」
冷静に言うフレナにパイクは驚愕の表情になる。
アルディは凶悪な笑いを浮かべて、自分の手を見る。段々と黒い光が収束されていく。
(ま、まずい・・・。あれで、あたい以外全員が全滅したんだ・・・。)
フェリアーテは昔全く同じ風景を見ていたのを思い出す。
「今度は貴様も一緒だ、喜べフェリアーテ。お前の師匠であるその老いぼれもろとも死ぬが良い。」
そう言って、アルディが黒い光をまとった手をかざすと、かざした部分に閃光が走る。そして、大爆発を起こす。
「うわぁぁあああ。」
「ぐわぁぁぁ。」
「バリアフィールド消滅。大ダメージ。機能低下。」
「きゃぁぁあああ。」
四人は思いっきり吹き飛ばされた。
「う・・・何だ・・・・この強さ・・・・。」
パイクは起き上がろうとしたが、身体に力が入らずに倒れたまま動けなかった。
「く・・・これ程とは・・・思わんかったわい・・・。」
ラジャの方は何とか立ち上がる。
「機能低下中。ですがまだ行けます。」
フレナもむっくりと起き上がった。
「あの時に比べたらこんなもん!」
フェリアーテは歯を食いしばってゆっくりと立ち上がった。
ラジャとフレナの目が不意に合う。そして、二人は頷く。
「フェリアーテ、後は頼む。」
「フェリアーテさん、帰る場所を守って下さい。お願いします。」
「えっ!?二人共どういう事だい???」
フェリアーテは訳が分からず、二人に聞くが答えは返ってこない。
「毛玉は戦線離脱。老いぼれとおもちゃももうお終い。何をした所で変わらない。後は・・・フェリアーテ・・・貴様だけだ・・・。あの時の屈辱・・・忘れんぞ・・・。」
最初はあざ笑うかのように三人の方を見て言うが、最後にフェリアーテを忌々しく睨みつけながら言う。
「人に癒しを・・・。」
「神よ奇跡をここに・・・。」
フレナとラジャがそう言うと、それぞれの傷が治っていく。
(今のあたしに出来る事・・・。)
「神よ・・・我に力を・・・悪しきものを・・・燃やし尽くせ!!!セイントファイヤー!!!」
フェリアーテはアルディに向かっていつもなら片手の所を兆手を突き出しながら叫ぶ。すると、さっきのラジャの比ではない白い火の波がアルディを襲う。
「フェリアーテはやはり・・・わしの見込み通りじゃった・・・。ど、どうじゃ?」
その炎の凄さに、少しポカンとしていたラジャだったが、燃え盛る白い炎が消えそうになり注目した。
パイクも立ち上がり、フレナも一緒に成り行きを見守っていた。
炎が消えると、右腕の無くなっているアルディが居た。
「あの時は手・・・今回は腕までだと・・・。くっくっく・・・たかが人間の分際でやってくれる。だが、ここまでだ。」
アルディが笑いながら言うと、どんどんと消えた腕が再生されていく。
「一度に消し飛ばせんと駄目ということか・・・。」
ラジャは苦い顔をして言う。
「我々は絶体絶命と思われます。」
「そんな事冷静に言わないでよ〜。」
冷静に言うフレナの言葉にパイクが苦笑いしながら突っ込む。
「冷静ではありません。非常に慌てておりLVMAXの警報が体中で出ています。」
フレナはそう言いながらも、口調はやはり冷静そのものだった。
「ここまでやってくれたお礼に、簡単には殺しも壊しもせんぞ。ありがたく思うんだな。」
完全に手まで再生したアルディは、薄く笑いながら言い放った。

「く・・・。」
パイクは、持っていた武器全てを壊され地面に突っ伏したまま動かなくなった。
「機能・完全・・停止・・・。」
フレナは殆どバラバラになって、その音声を最後に機能を停止した。
「駄目だ!やめてっ!ラジャ様!殺さないでーーー!!!」
傷らだけのフェリアーテは立ち上がれずにその場で蹲ったままだったが、喉を持たれているラジャを見て悲痛な叫び声をあげた。
「ふ・・・わしは・・・構わんわい・・・。十分に生きた・・・。フェリアーテよ・・・情け無い師匠で・・・すまんかったな・・・。もし・・・お主に・・・可能性が・・・残っているのなら・・・。信じる・・・事じゃ・・・。」
「うるさい・・・。」
ベギョッ!!!
嫌な音がして、ラジャの首が変な方向を向く。
「うわぁああああああーーーー!!!ラジャぁぁああああーーーー!!!!!」
フェリアーテは目を見開いて泣きながら叫んだ。
「後は、貴様だけだフェリアーテ。」
無造作にラジャの死体を放り投げると、アルディはフェリアーテの方を向く。
「うっ・・・うぅっ・・・。」
(あたいは・・・あたいは・・・あの時だけじゃなく・・・ここでも・・・何の・・・役にも・・・立てない・・・。ここには・・・メビウスは・・・居ない・・・。役立たずの・・・たいしか・・・居ない・・・。)
フェリアーテは両手を地面に付いたまま泣いていた。
「アルディ!なぶり殺しにでも何でも好きにしろっ!だけど・・・あたいは・・・あたいは・・・。」
歪む視界の中、アルディを睨んでそう言いながら無駄とは分かっていたが、セイントファイヤーを打つ。さっきよりも威力は落ちていて。相手にダメージもまともに与えられない。
「くっくっく。良いだろう。望みどおり。お前をじわじわと燃やし尽くしてやる。お前にそうされるものの苦痛を味わって消えていくが良い。」
アルディがそう言うと、手から真っ黒な炎が出てフェリアーテを包み込む。
「かっ・・・はっ・・・。」
一瞬で破れていた神官着は燃え尽きて、炎が身体を焼き始める。余りの痛みと熱さに声すら出ない。
(あたい・・・燃えていく・・・。消えていく・・・。ラジャ様・・・ごめん・・・。パイク・・・フレナ・・・助けられなかった・・・。)
意識朦朧とした中で、フェリアーテは回りを見渡して誤っていた。
【待ってるよ。】
不意に雪景色とハオの姿が脳裏に映る。
(ごめんよ・・・ハオ・・・あたい・・・もう・・・。)
フェリアーテは泣いていたが、黒い炎であっという間に蒸発していた。

【ふぇり〜あきらめちゃだめにゃ!】
【フェリアーテはん!諦めたらあかん!】
(チャオ・・・プレア・・・。)
フェリアーテの瞳の光が今にも消えそうになった時、不意に二人の声が聞こえたような気がした。
(でも・・・あたい・・・。)
【ふぇり〜は一人じゃないにゃ。みんながついてるにゃ。】
【そうやでぇ、ここで皆はんを助けられるんはフェリアーテはんしかおらん。】
弱気になるフェリアーテに二人の声が更に響く。
【ただ、俺は待ってる・・・。それは、俺の勝手だろ・・・。】
(ハオ・・・。)
また、一粒の涙がフェリアーテからこぼれた瞬間、本来なら蒸発していた筈なのに頬を伝い首筋を伝い胸へと落ちていく。そして、胸に涙が吸い込まれて消える。
そして、次の瞬間黒い炎が消し飛んだ。
「何っ!?」
アルディは変化に気がついて用心深くフェリアーテを見ている。
さっきまで焼け焦げていた肌はいつもの白い肌になっていて、髪型が綺麗なストレートのロングに変わっていた。
目を閉じて胸の前で手を組んで合わせているフェリアーテの体から直に白い光が漏れ始める。
「消えろっ!忌々しいフェリアーテ!!!」
アルディはそう叫んで両手をかざして衝撃波を飛ばすが、フェリアーテの身体まで届くことなく、何故か光の粒子があちこちに飛び散る。
黒くブスブスと煙を上げていた砂漠だったものが、粒子が落ちると一瞬にして緑の大地に変わっていく。
「どういう事だ・・・。」
アルディは信じられないと言った顔になって、その様子を見ていた。
フェリアーテから放たれている光は、やがて、倒れていたパイクやフレナに当る。
「んっ・・・あれ?」
「機能回復。オールグリーンです。」
二人は不思議そうに立ち上がる。
そして、ラジャにもその光が届く。ラジャは光に包まれて光が消えると、変な方向に曲がっていた首が元に戻っていた。
「・・・なんじゃ?わしは・・・どう言う事じゃ!?」
ラジャは起き上がって驚きながらも眩しそうに光の中心を見る。パイクとフレナも光の中心に居るフェリアーテの方を見た。
そして、光は徐々に収まって静かにフェリアーテが目を開ける。
「フェリ・・アー・・テ・・・なの・・か?」
「ラジャ・・・パイク・・・フレナ。無事?」
「あ・・・ああ。」
「一時完全停止しましたが、今はオールグリーンです。」
「フォフォフォ、わしも生きとるわい。」
三者三様の反応に、フェリアーテは優しく微笑む。
「女神・・・じゃ・・・。」
ラジャは微笑むフェリアーテを見てポツリと呟く。
「女神だと・・・人間風情が・・・そんな高位のものになれる訳が無い!ふっ、例え女神とて私の敵ではない!消えろっ!!!」
アルディはそう言いながら、フェリアーテに突っ込む。
「アルディ・・・狂気の刃よ。その猛り狂った刃を収めよ。我、そなたを鎮めん。」
フェリアーテは変に構えたりする事無く、ただ、両手を広げてアルディを受け入れるような格好になる。
「危ないっ!」
「危険です。」
「待つんじゃ、二人共。」
二人が構えると、間で立ち塞がって止めるラジャ。
「でもっ!」
「発砲許可を。」
焦って言うパイクと冷静に言うフレナに、黙って首を振るラジャ。それを見て、二人は諦めたように構えるのを解く。
「消えろっ!!!」
アルディが右手で胸を貫く。
「これでどうだ?フェリアーテ?」
ニヤリと笑いながら言うアルディだったが、貫いた筈の腕が消えていく。さらに、光が肩の方に広がって行き、どんどんとアルディの存在を消していく。
「ちいっ!」
アルディは離れながら、自分の肩を切り裂く。そして、暫くするが、再生しない。
「何っ!?再生しないだと!」
「アルディ・・・貴方に安息の時を・・・。」
ビクッ!
突然耳元で声がして、驚いたアルディはその場で過剰に反応する。
「何を恐れるのですか?貴方は何者をも恐れないのでしょう?」
「そうだっ!」
そういった瞬間、アルディはいつの間にか後ろに現れたフェリアーテに包み込まれるように抱き締められる。
「くっ、やめろっ!離せっ!おのれぇぇえええーーーー!!!」
暴れてフェリアーテの身体に触れるほど、アルディはどんどんと消えて行った。そして、最後には光の粒子に変わって辺りに振り注いだ。
「す、すげえ・・・。」
「ラジャさんの言う通り、フェリアーテさんは凄い方です。」
「わしとしては、予想を遥かに上回ったんじゃが・・・。」
三人は降り注ぐ粒子の中、フェリアーテを見上げていた。
「アルディ・・・貴方の存在は狂気より解き放たれ・・・また新たな存在として・・・生まれる事になるでしょう・・・。」
フェリアーテがそう言うと、両方の掌で一本の剣を持っている。そして、言い終わると剣は宙に浮いて破裂してやはり、周りと同じ光の粒子に変わった。
そして、それを見届けるとフェリアーテは静かに目を閉じる。
「まさか・・・。パイク、フェリアーテの落下地点に走るんじゃ!」
「落下開始。20秒後に地面と激突します。」
「だ〜。解説はいいから〜!」
三人は慌てて空中から落ちてくるフェリアーテを受け止めるべく走り出した。
ズササー!
「ふう、ギリギリセーフ・・・。」
パイクがギリギリの所でフェリアーテをキャッチした。
「10点満点です。パイクさん。」
パイクより少し遅れていたフレナはその場に止まって拍手しながら言っていた。
「はぁ・・・はぁ・・・やはり年寄りには無理じゃわい。ようやったパイク。」
「どうも。」
パイクは少し照れ臭そうに答えてから、持ったまま立ち上がる。全裸で綺麗なフェリアーテを思わずマジマジと見ていた。
「減点ですパイクさん。」
「こりゃ、それは余計じゃ。」
そう言いながらラジャは神官用のマントをフェリアーテの上からかけた。
「全くやりおったわい。帰って来る所は死守した。後はお主達次第じゃ。」
ラジャはそう言いながら一旦フェリアーテを見た後、晴れた空の更に向こう側を見るように見上げた。