同志

デス・ギガサンダーがセッドを襲おうとしていた。
しかし、その瞬間セッド前に白い盾が現れ防ぎ切った。
「何だと!!!」
ラゼブは勝ったと思っていたのもあったがデス・ギガサンダーが防ぎ切れた事実の方に驚いていた。
一方セッドの方は何が起きたのか分からず少しの間止まっていた。
「馬鹿者!何をやってる。今がチャンスだ!!!」
その一言で目が覚めた。
「上官殿!?」
傷だらけのセッドだったが、はっきりした言葉使いにベリルエルは安心した。
「デス・ギガサンダーと知ってて剣を離さんのはいかんぞ、セッド。」
少し笑いながら言うベリルエル。
「ベリルエル・レーテルか・・・。2対1でも構わんかかって来い!」
「ふっ。2対1だと?笑わせるな。貴様は数千人を相手しているのと同じだ。あの世でほざいてろ!行くぞセッド。」
「おうっ!」
二人は走り出す。傷だらけだったセッドは光に包まれ回復する。
「ぬかせーーーー!!!」
ラゼブも二人に向かって走り出す。
「地の利、我に有り。大地よ目を覚ませ!」
ベリルエルがそう言うと、地面が変化して一気にラゼブの足元に絡みつく。
「何っ!?くっ!魔法が使えん上に効かんだと!!!」
ラゼブは流石に焦った。
「貴様の魔法は既に封じた。それに、その力は魔力とは異質の力だ。貴様にその力をどうこうする事は出来ん。行け!セッド。」
「これでトドメだっ!!」
ベリルエルの言葉の後一気に加速し剣を突き出す。剣は鎧を無視するかのようにラゼブの体を貫き通した。
「ぐぶっ。見事だ・・・。しかし、お前達がなぜこんな小隊に甘んじている?」
血を吐きながらも、二人に問い掛ける。
「248は私以外にはまとめられん。ただそれだけだ。」
「んでもって、俺は上官殿以外には命令されたくないんでね。まあ、お前の言いたい事は分かるけどな。上官殿は何故?ってのは俺も同感だ。」
二人の言葉を聞いて少し笑うラゼブ。
「ふっ。最後にお前達に礼を言う。お前達と戦えて良かった。悔いは無い。いや、惜しむべきはお前達の才能が生かされていないのが残念だ。俺なら絶対重く用いてる。お前達みたいな有能な部下が欲しかった・・・。俺は最後まで部下には恵まれんかったな・・・・。さて、俺を倒したんだ。死ぬなよ、セッドにベリルエル。お前達は世界を動かせる。それを頭に止めておけ。ふふふ、ベリルエルよお前には分かっているかもしれないがこれからが本当の戦いだ。人間同士の下らん権力争いなんぞどうでも良いのだ。そうだろう?ベリルエル。ぐふっ」
血を吐きながらもニヤリと笑いながら言うラゼブ。
「お前・・・何言ってんだ?」
その言葉の意味が分からず訝しげな顔をするセッド。それとは対照的に厳しい表情になるベリルエル。
「ラゼブ・・・貴様気が付いていたのか。お前はここで私達と戦うべきでもなく死ぬべき人間ではなかったのかもしれん・・・・。」
「構わんさ。お前の様に分かっている人間が一人でも生きていればそれで良い。セッドには後で説明しておけ。それに俺は満足している。セッドのような好敵手と会え戦えた事にな。俺は元々あんな強力な呪文は使えんかった。使え始めたのはつい最近になってからだ。それだけ暗黒・・・・闇と言えばいいのか。その力が強くなってきている証拠だ。ぐふっ。」
血を吐きながらもラゼブは構わず続ける。
「ベリルエル、セッド、生き残れ。そしてお前達を含む人間が世界を救う事になる。救わずとも、その一端を担うと俺は信じてる。俺は248小隊の人間ではないが、俺の分も生きてくれ・・・・。それと、俺の首を取って本陣に持って帰れ。」
「途中までは分かったが最後の話は出来ん相談だ。お前は私達と同じだ。ここで手厚く葬る。さっきまでは敵味方であったが、見事な最後に敵味方は無い。そして、私は貴様の人間性を認めた。下らん出世の為にお前を辱める事など出来ようか。私はこういう人間だ。だからいまだに小隊長なのかもしれん。。」
最後は少し微笑みながら言うベリルエル。
「では、後俺をどうするかはお前達に任せる。どうせ俺を回収には来んだろうしな。お前達と共に居たかったものだ。248小隊の人間は幸せ者だな。ふふっ。さらばだ、英雄達よ・・・・世界を・・・・た・・・・・・・の・・・・・・・・・む・・・・・・・・・・・」
その言葉を最後にラゼブは息を引き取った。
「上官殿。俺こいつ好きですよ。」
「ああ、私もだ。立派な男だ。ここで死ぬべき人間ではなかった・・・。」
ベリルエルとセッドは少しの間ラゼブの死に顔を見ていた。二人には安心した顔に見えていた。
「よし、すぐに埋葬後本陣に戻るぞ。」
その言葉ですぐに穴を作りそこに埋め、最後にラゼブ自身が使用していた剣を突き立てた。そして、ベリルエルの魔法で、
{勇者ここに眠る}
と刻んだ。
「勇者ラゼブに敬意を表し、安らかな眠り、輪廻転生を願い黙祷!!!」
二人は黙祷しながら小さく呟いた。
「貴様の分も生きて見届ける。約束だ。だから安心して眠れ。」
「俺がお前の事語り継ぐぜ。お前も248の一員だよ。」
そして、二人は静かに目を開けた。
「上官殿さっきは本当に助かった。サンキュー。」
そう言いながらウインクするセッド。
「当たり前だ。いつも言ってるだろうが。私の五ヶ条の一つだ。絶対に見捨てはせん。」
ウインクを軽く流しながらキッパリと言う。
「俺、本気で改めて惚れて惚れ直した。好きだぜ上官殿、いやベリルエル。」
そういって抱き寄せて頬にキスをする。
「言葉だけで十分だ!調子に乗るな!!」
ガスッ!!!
ベリルエルの切れの良いアッパーが入る。うずくまっているセッドを無視して走り出すベリルエル。
「くうー。効いたー。」
その言葉にベリルエルは大分離れた先から振り向く。
「早くしろセッド。時間が無いんだ。遅れるぞ。それと・・・安心しろ私もお前は好きだぞ。休暇のスケジュールが重なったら戦場以外で付き合ってやっても構わんぞ。ただし、今回遅刻したらこの話は無しな。」
少し微笑みながら言う。
「よーーーーっし!約束ですよ上官殿。その言葉忘れたなんてのは無しですからね。」
真面目な顔をして言うセッド。
「私が今までお前との約束を破った事があるか?」
その言葉を聞いて。セッドは一気に立ち上がる。
「了解です!!!」
その言葉を言ったが早いか猛然と本陣に向かって走り出した。

ベリルエルは自分を通り過ぎて本陣に走っていくセッドを見送りながら、
「ふっ。休暇を決めるのは私なのだがな。全く単純な奴。」
そう言って笑いながら本陣に向かってテレポートした。