理解

ベリルエルは部下には見せなかったがかなり参っていた。
フェースの死は思いの他、戦力だけでなく精神的、士気的にもダメージになっていた。
「隊長いますか?」
ベリルエルは面倒臭そうにドアの方を見るが、すぐに気を取り直して返事をする。
「何だ?セッド。とりあえず入って来い」
そう言われてセッドはドアを開けて中に入る。
「で、何だ?セッド。」
「隊長大丈夫ですか?」
心配そうに見ながら言うセッド。
ベリルエルは溜息をつきながら、
「お前に嘘を言った所でしょうがないからな。正直辛い。フェースを失ったのは。半身をもがれた思いだ・・・。私はあいつに何もしてやれなかった・・・。」
ベリルエルの目から涙が流れる。流石にセッドは驚いた。泣くのを見るのは初めてだった。
しかも、長年付き合っている連中でも泣いたのを見た事があるというのは聞いた事が無かった。
「隊長・・・・・・」
「ふふふ。笑いたかったら笑え。無様に部下を死なせて悲しんでいる馬鹿だとな!」
涙が止まらないまま、セッドに怒鳴る。
「隊長。俺分かったよ。何で皆が隊長について行くのか。そしてフェースが庇ったのか。」
俯きながら苦しそうにセッドは言った。
「私の代わりなんぞになってはいけなかったのだ。フェースは。いや、フェースだけじゃない。他の死んでいった者達も!」
机を叩いて、握り拳から血が出ているのにも構わずベリルエルは強く言い放つ。
「違うよ隊長。隊長は生きなきゃいけないんだ。生き残って皆の面倒みなきゃいけないんだよ。隊長以外に248小隊をまとめる事なんて出来ない。俺はそう思う。隊長が生き残ってまとめる事がフェースを初め死んでいった奴等にしてやれる弔いじゃないかと思う。死んでいった奴等も、俺も、今生きている皆も隊長が好きなんだよ。だからさ元気出してさ、いつもみたいになってくれよ。」
いつもと違い神妙になるセッド。それを見て、
(こいつは、ただの戦闘馬鹿だと思ったが私の見込み違いだったな。)
「ふっ。お前に慰められる様ではな。私もどうかしてるな。」
「おいおい、人が折角慰めてるのにそりゃあねえだろ。」
セッドは苦笑いしながら言う。
「すまんな。礼を言うぞ。お陰で大分気が楽になった。お前がいてくれて良かった。ありがとう。」
ニッコリ笑ってセッドにいった。セッドは初めて見るベリルエルの表情にドキドキしていた。
「じゃあ、それだけだから。しっかりしろよ、上官殿」
誤魔化す様にそれだけ言って出ていった。
その後ベリルエルは椅子に座った。
「フェース・・・あいつが私の新しい半身になるかもしれないというのは満更嘘じゃ無さそうだな・・・」
ベリルエルは呟いた後口元で少し笑みを浮かべながら、何処か遠くを見ながら泣いていた。

これが初めてセッドがベリルエルに上官殿と言った時だった。
これ以来、セッドはベリルエルを上官殿と呼ぶようになる。